• 2019. 09. 11
  • 税制改正ポイント

2019年度 税制改正のポイント

デロイト トーマツ税理士法人
藤澤 文太  /  杉村 友輝  /  片桐 啓輔

(2) 税制適格ストックオプションの適用対象者の拡大

個人がストックオプションを発行法人から無償など有利な条件でまたは役務提供の対価として付与を受けた場合において、その権利に譲渡制限が付されているときは、所得税は付与時ではなく行使時において課されることとされています。 しかし、ストックオプションのうち一定の要件を満たすものについては付与時や行使時に課税はなくその行使により取得した株式の売却時まで課税が繰り延べられる特例が設けられています。この特例を税制適格ストックオプションといいます。

税制適格ストックオプションの適用対象者の範囲は、発行会社または当該会社と一定の資本関係にある子会社等の取締役または使用人である個人及びその相続人で一定の個人(一定の大口株主を除く)に限定されていました。 そこで、ベンチャー企業が飛躍的な成長を実現するために高度かつ専門的な人材を社外からも機動的に確保することが必要となるといった状況を考慮し、税制適格ストックオプションの適用対象者の範囲が現行の「取締役、執行役及び使用人」に加え、「一定の要件を満たす外部協力者」を含むものに拡大されました。

ストックオプションの適用対象者

出所:「ストックオプション税制に関する認定制度」(経済産業省)

適用要件

設立10年未満等の一定の要件を満たす株式会社が「社外高度人材活用新事業分野開拓計画」を策定し、主務大臣による認定を受けることで、当該計画に沿って行う新事業に従事する社外高度人材に対して付与するストックオプションについて、税制適格ストックオプションが適用されます。なお、当該計画の認定を受けることの他に通常の税制適格ストックオプションの適用要件を満たす必要があります。

「社外高度人材活用新事業分野開拓計画」において税制優遇措置を受けようとする場合の主な要件は下記の図のとおりです。

1.認定対象企業   2.社外高度人材   3. 専門性と貢献内容との関連性等で判断。
1. 認定対象企業の主な要件
(下記の全てを満たすこと)
  • ① 設立10年未満
  • ② 資本金10億円以下又は従業員数2000人以下
  • ③ 非上場
  • ④ ハンズオン支援を行う、ベンチャーキャピタル等から出資を受けていること。また、ベンチャーキャピタル等から最初に出資を受けた時点において、資本金が5億円未満かつ従業員数900人以下であったこと。
  • ⑤ 大規模法人グループの所有に属さない 等
2. 社外高度人材の要件
(下記のいずれかを満たすこと)
  • ① 国家資格を保有 + 3年以上の実務経験
    【例: 弁護士・会計士等】
  • ② 博士の学位を保有 + 3年以上の実務経験
  • ③ 高度専門職の在留資格をもって在留 + 3年以上の実務経験
  • ④ 上場企業で役員(取締役等)の経験が3年以上
  • ⑤ 将来成長発展が期待される分野の先端的な人材育成事業に選定され従事していた者
    【事業の例: 「未踏」、「異能(Inno) vation」】
    【人材の例: プログラマー・エンジニア等】
  • ⑥ 過去に一定以上の売り上げ規模の製品又は役務の開発に携わった者
    【例: プログラマー・エンジニア・デザイナー等】
3. 専門性と貢献内容の関連性
(下記のいずれかを満たすこと)
  • ① 製品・サービスの開発に貢献すること
  • ② 事業拡大や販路拡大に貢献すること
  • ③ 会社成長期の組織拡大に伴うガバナンス体制構築等に貢献すること

出所:「ストックオプション税制に関する認定制度」(経済産業省)

適用時期
中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律の施行の日(2019年7月16日)より適用されます。