2022年度 税制改正のポイント
デロイト トーマツ税理士法人
幅 建介 / 味岡 貴英 / 石田 貴也
(8) 過少申告加算税等の加重措置の整備
税務調査等により修正申告を行う場合や更正・決定を受ける場合等には、過少とされた税額のほか、過少申告加算税(最大で10%)、無申告加算税(最大で15%)などが課せられます。
今回の改正によって、帳簿に記載すべき事項が十分に記載されていない場合には、過少申告加算税、無申告加算税が加重されることとなりました。
対象となる帳簿
収入金額(売上金額又は業務収入金額)の記載に関するものが対象となり、具体的には、青色申告法人が法人税法上保存すべきである仕訳帳、総勘定元帳や、消費税の事業者が保存すべきである帳簿がこれにあたるとされます。
加重措置
収入金額のうち、帳簿に適正に記載・記録されている取引金額の割合に応じて、通常の過少申告加算税等のほか、追加で以下の加重割合が課されます。
例えば過少申告加算税の対象となる場合には、最大で20%(通常分10%+加重措置分10%)が課されることになります。
記載・記録の水準 |
改正前 |
改正後 |
収入金額の1/3以上2/3未満 |
規定なし |
5%の加重割合 |
収入金額の1/2未満 |
規定なし |
10%の加重割合 |
収入金額の記載・記録なし
(帳簿なし) |
規定なし |
10%の加重割合 |
- 適用時期
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2024年1月1日以後に法定申告期限等が到来するものから適用されます。
(9) インボイス制度の登録手続き等の見直し
2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されます。
これにより、消費税の仕入税額控除を受けるために、適格請求書発行事業者から交付を受けた「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の保存が求められます。
そのため、適格請求書発行事業者の登録を受けていない免税事業者等からの仕入れについては、一定の経過措置は設けられているものの、今まで通りに仕入税額控除の適用を受けることができなくなります。
① 適格請求書発行事業者の登録手続きの柔軟化
適格請求書発行事業者への登録手続きについて、基本的には課税期間の中途で登録を受けることはできず、次の課税期間からの登録となります。
ただし、インボイス制度の導入から一定の期間においては、課税期間の途中からの登録が可能な措置が施されています。
今回の改正では、課税期間の途中からの登録が可能な期間が拡大され、2029年9月30日までに開始する課税期間までは、課税期間の途中からの登録が可能となりました。
そのため、当面の間は、免税事業者と考えられる事業者との取引であっても、適格請求書発行事業者への登録状況を随時ご確認いただくことが望まれます。
登録の時期 |
改正前 |
改正後 |
2023年10月1日の属する課税期間における登録
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登録日から適格請求書発行事業者となる |
登録日から適格請求書発行事業者となる |
2023年10月1日から2029年9月30日の属する課税期間(上記を除く)における登録 |
原則として、課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者となった日以後の課税期間の初日から適格請求書発行事業者となる
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登録日から適格請求書発行事業者となる |
- 例
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3月決算の事業者については、2030年3月期までは、課税期間の途中から適格請求書発行事業者への登録が可能です。また、「課税事業者選択届出書」の提出も不要とされています。
2031年3月期以降は、次の課税期間からの登録となるほか、手続きに先立って「課税事業者選択届出書」の提出が必要となります。
② 適格請求書発行事業者から免税事業者等に変更する場合の見直し
免税事業者についても、適格請求書発行事業者への登録を行った場合には、「適格請求書」や「簡易適格請求書」を発行することができます。
ただし、登録を行うことで、消費税の納税義務の免除を受けることができなくなります。つまり、課税事業者となります。
今回の改正では、登録後に登録の取消しをした場合にも、適格請求書発行事業者への登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは、消費税の納税義務の免除が受けられないこととなりました。
つまり、課税事業者であることがその期間は強制されることとなります。
- 例
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3月決算の事業者が2025年3月期中に適格請求書発行事業者への登録を行った場合には、2年を経過する2027年3月期までは消費税の納税義務の免除が受けられないこととなります。
3. おわりに
今回の税制改正の内容は如何でしたか?コンセプトは「成長と分配の好循環」「コロナ後の新しい社会の開拓」であり、多様なステークホルダーに配慮した各種経済活動への後押しを打ち出した内容となっています。
今回のコラムをご覧いただき、税制改正の内容を理解していただくことで、貴社の適切な税務申告の一助となれば幸いです。
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したがって、本記事で説明した税制等の適用を前提とした取引等を実施される場合は、個別の事実関係を踏まえて、専門家の助言を得る事が必要です。
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