2021年度 税制改正のポイント
デロイト トーマツ税理士法人
渡辺 寛己 / 江﨑 隆一 / 旗 知満
(8) 電子帳簿等保存制度の見直し
経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資するため、事前承認制度を廃止するなどの大胆な要件緩和がされるとともに、電子データの改ざん等の不正行為を抑止するための担保措置がとられました。
① 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度の見直し
事前承認制度が廃止され、自社にて保存要件の充足を確認することで電磁的記録の保存を行うことが可能となりました。また、一定の保存要件を充足する場合には過少申告加算税が5%減額されます。
要件 |
改正前 |
改正後 |
① 承認制度 |
備付けを開始する日の3月前までに承認申請 |
廃止 |
② 電磁的記録の保存要件 |
申請承認時に確認 |
自社にて保存要件の充足を確認 |
③ 過少申告加算税の減額 |
- |
一定要件を充足する場合に過少申告加算税を5%減額 |
② 国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し
事前承認制度が廃止され、タイムスタンプ要件、適性事務処理要件、検索要件について大幅に要件緩和されました。
要件 |
改正前 |
改正後 |
① 承認制度 |
保存に代える日の3月前までに承認申請 |
廃止 |
② タイムスタンプ要件 |
付与期間 |
3日以内 |
最長約2月以内 |
受領者等の自署 |
必要 |
不要 |
タイムスタンプの付与 |
必要 |
一定の場合には不要 |
③ 適正事務処理要件 |
相互けん制
定期的な検査
再発防止策の社内規定整備等
|
廃止 |
④ 検索要件 |
検索項目 |
取引年月日
勘定科目
取引金額
その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目
|
取引等の年月日
取引金額
取引先
|
検索機能 |
範囲指定及び項目を設定できる機能の確保が必要 |
一定の場合には不要 |
③ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し
タイムスタンプ要件、検索要件が大幅に要件緩和されました。なお、電磁的記録の出力書面等の保存をもって当該電磁的記録に代えることが出来る措置については廃止されました。
要件 |
改正前 |
改正後 |
① タイムスタンプ要件 |
付与期間 |
受領後遅滞なく |
最長約2月以内 |
② 検索要件 |
検索項目 |
取引年月日
勘定科目
取引金額
その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目
|
取引等の年月日
取引金額
取引先
|
検索機能 |
範囲指定及び項目を設定できる機能の確保が必要 |
一定の場合には不要
一定の者は検索要件の全てが不要
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④ 電磁的記録の適正な保存を担保するための措置
国税関係書類に係るスキャナ保存制度並びに申告所得税、法人税及び消費税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、電磁的記録の適正な保存を担保するために次の措置が講じられます。
区分 |
改正内容 |
重加算税の額の加算
(国税関係書類)
|
-
隠蔽・仮装された事実に基づき生じた申告漏れ等に課される重加算税の額については、通常課される重加算税の額に当該申告漏れ等に係る本税の10%に相当する金額を加算した金額とされる
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電磁的記録の適正な保存
(国税関係書類)
|
- 保存義務者は、保存要件を満たさない電磁的記録についても、保存しなければならないこととされる
- 電子取引による電磁的記録の保存義務者が行う当該電磁的記録の出力書面等の保存をもって当該電磁的記録に代えることができる旧制度の措置は、廃止される
- 保存要件を満たさない電磁的記録については、国税関係書類等と扱わないこととされる
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- 適用時期
-
2022年1月1日より適用開始となります。
3. おわりに
企業活動の多様化やグローバル化は年々複雑性を増し、それに合わせる形で税制改正も行われます。
また、毎年行われる税制改正により、税制はより複雑となり、専門性を増しています。今回のコラムをご覧いただき、税制改正の内容を理解していただくことで、貴社の適切な税務申告の一助となれば幸いです。
本記事の内容は、現時点の情報に基づく一般的な事項の記載にとどまります。
したがって、本記事で説明した税制等の適用を前提とした取引等を実施される場合は、個別の事実関係を踏まえて、専門家の助言を得る事が必要です。
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