• 2025. 04. 21
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EAIとは? 仕組みや機能からETLとの違い、
選定のポイントまでわかりやすく解説

EAIとは? 仕組みや機能からETLとの違い、選定のポイントまでわかりやすく解説

企業内で複数のシステムがバラバラに稼働する場合、データ連携に手作業が発生したり、情報の整合性に問題が
生じたりすることは珍しくありません。こうした課題を解決するツールが、EAIです。
本記事では、EAIの基礎知識や仕組み・機能をはじめ、ETLとの違い、導入メリット、選定時のポイントまでを
わかりやすく解説します。システム連携の改善を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

EAIとは

EAIとは、Enterprise Application Integrationの略で、企業内で稼働する複数のシステムやアプリケーションを連携し、データ統合するためのシステムやツールを指します。EAIツールと呼ばれることもあります。

一般的に、企業では、販売管理システム、在庫管理システム、人事システムなど、業務ごとに異なるシステムが導入されています。これらは、個別に開発・導入されるため、相互に連携する機能が最初から備わっていないことがほとんどです。EAIは、こうしたシステムを連携させ、データの流れを一元管理する役割を果たします。

近年のEAIは、「ノーコード」と呼ばれる開発手法に対応しているものが増えてきました。専門的なプログラミング
知識がなくても、直感的な操作でシステム連携を構築できるため、IT部門だけでなく業務部門でも活用できるようになっています。

EAIはデータ連携ツールの一種です。
データ連携ツールについては、「データ連携ツールとは?機能や種類、選定時のポイントをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

EAIが注目される理由

デジタル化の進展に伴い、各部門で生成されるデータ量は増加の一途をたどっています。これらが個別システムに
分散したままでは、部門ごとにデータが孤立する「データのサイロ化」が発生し、経営判断に悪影響を及ぼします。

EAIは、こうしたデータの壁を取り払い、組織全体でのデータ統合を促進する効果が期待できます。データに基づいた意思決定を支援することで、データドリブン経営を実現する重要なツールとして注目されています。

サイロ化やデータドリブン経営については、
サイロ化とは?発生する原因や問題、解消するための方法をわかりやすく解説
データドリブン経営とは?メリットや実現のステップを解説」で詳しく解説しています。

EAIの仕組みと主な機能

EAIの仕組み

EAIは、「ハブ・アンド・スポーク型」と呼ばれる方式で動作するのが一般的です。
この方式では、中央のEAIハブが各システム間のデータ連携を統括します。

中央のEAIハブが各システム間のデータ連携を統括します

ハブは各システムからデータを取得し、必要に応じて形式を変換して適切な宛先システムへ送信します。例えば、
販売管理システムの出荷データを、ハブを介して在庫管理と会計の両システムへ同時に反映することができます。

このハブ中心の構成は、システム間の接続管理を簡素化できるメリットがあります。新システム追加時には、ハブ
との接続のみの構築で済むため、システム拡張が容易になります。

EAIの主な機能

EAIの仕組みは、次のような機能によって支えられています。

アダプタ機能

さまざまなシステムやデータベースに接続するための接続口となる機能です。多くのEAIツールはSAP、Salesforceなどの業務システムや、SQL Server、MySQLなどのデータベース向けのコネクタを標準装備しています。基幹システムからのデータ抽出やCRMシステムへのデータ送信などに利用されます。

データ変換機能

異なるシステム間でデータ形式やプロトコルを変換する機能です。XML、JSON、CSVなど複数の形式に対応して
います。例えば、販売システムのCSVデータを在庫管理システム用のXML形式へ自動的に変換することが可能です。

ルーティング機能

出力したデータを目的のシステムへ自動的に振り分ける機能です。条件分岐や優先度設定なども可能です。例えば、注文データが入力されると、注文情報を在庫システム、金額情報を会計システムへと自動的に振り分けます。

ワークフロー管理機能

複数システムにまたがる業務プロセスを定義し、自動実行します。部門横断的な業務の自動化が可能です。

モニタリング機能

データ連携状況をリアルタイムで監視し、エラー発生時に通知する機能です。システム連携のトラブルを早期に発見し、迅速に対応することができます。

EAIとETL・EDI・ESBの違い

EAIと似た概念のツールはいくつかありますが、それぞれの役割や用途が異なります。
ここでは、ETL・EDI・ESBとの違いを比較してみましょう。

ETL との違い

ETL(Extract, Transform, Load)は、複数のシステムに分散されたデータを統合し、分析やレポーティングに活用するためのツールです。主に、BIツールやデータウェアハウス(DWH)へのデータ連携を目的としています。

EAIとETLはいずれもシステム間のデータ連携を担いますが、EAIはリアルタイムでの業務アプリケーション連携を
重視し、プロセス全体を統合・制御する役割を持ちます。
一方、ETLはデータ統合に特化し、特にデータの加工や整形(クレンジング)に強みがあります。

近年では両者の機能が進化し、用途によってはEAIをETLの代わりに活用するケースも増えています。

BIツールについては、「BIツールの基本や活用シーンを解説!データドリブンな組織を作るためのガイド」で詳しく解説しています。

EDIとの違い

EDI(Electronic Data Interchange)は、企業間での受発注・請求・在庫管理などのデータ交換を効率化するためのツールです。EAIは企業内部のシステム連携に特化し、EDIは企業間の取引データ交換に利用されます。

ESBとの違い

ESB(Enterprise Service Bus)は、企業内のシステム間通信を統一するための基盤(バス)として機能します。
EAIはデータ変換や業務プロセスの統合に重点を置いたツールであるのに対し、ESBは各システムをバスに接続し、
統一された通信方式でやり取りできるようにするインフラの役割を果たします。



名称 正式名称 特徴
EAI Enterprise Application Integration 企業内の異なる業務アプリケーションをリアルタイムで
連携し、プロセスの自動化・最適化を行う。
ETL Extract, Transform, Load データの抽出・変換・蓄積を行い、BIツールやDWHでの
データ分析やレポーティングを支援する。
EDI Electronic Data Interchange 企業間で標準フォーマットの取引データ(受発注・請求など)
を自動交換し、業務効率を向上させる。
ESB Enterprise Service Bus 企業内のシステムを統一された通信基盤(バス)で接続する。

EAI導入のメリット

EAIを導入することで、企業は次のようなメリットを得られます。

システム間データ連携の効率化・高速化

EAIの導入により、システム間のデータ連携が自動化され、データ連携処理が大幅に効率化されます。従来の手作業やカスタム開発による連携方法と比較して、データの処理速度が大幅に向上します。リアルタイムでの情報共有が可能となり、企業の意思決定スピードの迅速化につながるでしょう。

ノーコード開発による工数・コストの削減

近年主流となっているノーコード対応のEAIでは、直感的な画面操作でデータ連携の仕組みを構築できます。個別の
複雑なシステム連携開発が不要になるため、開発期間の短縮とコストの削減が可能です。
また、保守や機能のバージョンアップもツール側で対応されるため、長期的な運用コスト削減効果も期待できます。

データ精度の向上

手作業によるデータ転記が不要になり、人的ミスを大幅に削減できます。システム間のデータ連携が自動化されることで、一貫性のあるデータ管理が生まれ、業務プロセス全体の信頼性が向上するでしょう。その結果、データに基づく正確な分析や意思決定が可能になります。

こうしたメリットは、DXをすすめる企業にとって、データ活用の障壁を大きく下げ、ビジネスの競争力を高める重要な要素となります。

DXについては、「経理DXが注目されている理由、メリットや進め方、役立つツールを解説」で詳しく解説しています。

EAIツール選定のポイント

EAIを導入する際には、以下のポイントに注意して選定・検討を行うことが重要です。

連携システムの種類・豊富さ

どのアプリケーションやデータベース、クラウドサービスと連携できるかは、EAIツール選定の重要な基準となります。自社で利用している、または今後導入予定のシステムとの連携が可能かを事前に確認しましょう。

ノーコードツールの使いやすさ

近年主流のノーコード対応EAIでは、画面上で定型機能をブロックのように組み合わせて開発できる機能が搭載されています。この機能の操作性や使い勝手は、選定における重要なポイントとなります。あらかじめ用意された操作ブロックが多いほど開発効率が向上しますが、少ない場合には自由度が高まる反面、より多くの専門知識が必要になります。可能であれば、導入前にトライアル版で実際に操作感を検証するといいでしょう。

提供形態

EAIツールには、クラウドサービス型とパッケージソフトウェア型があります。クラウドサービス型は、サーバー運用の手間がなく、データ連携処理の開発に集中できる利点がありますが、自社内のシステムとの連携にはネットワーク構成の考慮が必要です。一方、パッケージソフトウェア型は、初期構築の手間はかかりますが、自社環境に最適化した運用が可能です。自社のセキュリティポリシーや既存システムの配置状況を考慮して選択しましょう。

サポート体制の充実度

ノーコード開発とはいえ、一定の知識やスキルの習得は必要です。特に業務部門での内製開発を目指す場合、マニュアルや教育・トレーニングなどのサポートサービスが充実しているかがポイントになります。また、トラブル発生時の対応スピードや、技術的な問い合わせへの対応体制も事前に確認すべき重要な要素です。

費用

導入コストだけでなく、長期的な運用コストも含めて総合的に比較検討しましょう。パッケージソフトウェア型は、初期ライセンス費用に加え、サーバー構築費やサポート費用が必要です。クラウドサービス型は、初期コストが低い反面、月額固定制や従量課金制など課金形態によっては長期的にコストが増大する可能性があります。自社の予算規模や利用想定に基づいた適切な選択が求められます。

セキュリティ対策の確認

システム間でデータをやり取りする際のセキュリティ機能を確認します。データの暗号化、アクセス制御、監査ログなどのセキュリティ機能が充実しているかをチェックしましょう。特に顧客情報や機密データを扱う場合は、より厳格なセキュリティ対応が求められるため、認証取得状況やセキュリティインシデント対応体制も含めて検討することが重要です。

自社に適したEAIツール導入で意思決定のスピードアップを

EAIは、企業内のシステム間の壁を取り払い、分散したデータを統合する重要な役割を担っています。経営判断に必要な情報をリアルタイムで把握できるようになり、意思決定のスピードアップにつながります。
しかし、EAIツールの選定を誤ると、十分な効果を発揮できない可能性もあります。自社のシステム環境や業務フローを正しく把握し、拡張性や運用のしやすさ、コストなどを総合的に考慮することが重要です。

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