• 2025. 04. 15
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ICSコラムシリーズ:管理会計 vol.8 第8回「活動基準原価計算(ABC)」

目次

活動基準原価計算とは

活動基準原価計算は、英語のActivity-Based Costingの日本語訳で、ABCと省略されます。

ABCは、製品の製造間接費を適切に計算するために1980年代にハーバード・ビジネス・スクールのロバート・S・キャプラン教授が
1980年代に提唱したものです。

ABCは、製品の製造間接費だけでなく、サービスの費用を計算するためにも活用されています。

ABCは、製造業だけでなく、建設業等の民間企業、また、官公庁でも活用されています。

活動基準原価計算に基づく計算

活動センター、または活動センターを細分化したコスト・プールを設定し、資源ドライバーに基づいて資源(製造間接費等)を集計します。

活動センター、またはコスト・プールごとの活動ドライバーに基づいて、活動を原価計算対象(各指図書等)に配賦します。



資源ドライバー

活動に対して資源(製造間接費等)を配賦するときの配賦基準

活動ドライバー

原価計算対象(各指図書等)に対して活動を配賦するときの配賦基準


ABCによる資源の配賦

・資源ドライバーにより資源を活動別に集計 
  ここで集計された原価が活動原価


・活動ドライバーにより活動原価を原価計算対象別に集計 
  ここで集計された原価が原価計算対象別の原価


原価計算基準に基づく計算

原価計算基準に基づく計算

個別原価計算の場合、次のいずれかによります。

・間接費予定配賦率に、各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算します。

・固定間接費予定配賦率および変動間接費予定配賦率に、それぞれ各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算します。

  部門間接費の予定配賦率は、一定期間における各部門の間接費予定額又は各部門の固定間接費予定額および変動間接費予定額を、
  それぞれ同期間における当該部門の予定配賦基準をもって除して算定します。




個別原価計算の場合



活動基準原価計算の計算例

・生産量  製品A 100個  製品B 200個

・直接材料費  製品A 2000円  製品B 4000円

・直接労務費  製品A 1000円  製品B 2000円

・製造間接費  36,000円


   活動別内訳  資源ドライバーによる配賦後金額

  発注活動 検収活動 組立活動 検査活動
工場管理部門 労務費 6,000円 4,000円 1,000円 1,000円 12,000円
工場減価償却費 2,000円 2,000円 12,000円 2,000円 18,000円
工場水道光熱費 1,000円 1,000円 3,000円 1,000円 6,000円

発注活動原価9,000円、検収活動原価7,000円、組立活動原価16,000円 検査活動原価4,000円


・活動ドライバー

  発注回数  製品A 3回  製品B 6回
  検収回数  製品A 3回  製品B 4回
  組立時間  製品A 6時間  製品B 10時間
  検査時間  製品A 1時間  製品B 3時間



発注活動原価

9,000÷(3+6)=1,000
製品A 1,000×3=3,000円  製品B 1,000×6=6,000円

検収活動原価

7,000÷(3+4)=1,000
製品A 1,000×3=3,000円  製品B 1,000×4=4,000円

組立活動原価

16,000÷(6+10)=1,000
製品A 1,000×6=6,000円  製品B 1,000×10=10,000円

検収活動原価

4,000÷(1+3)=1,000
製品A 1,000×1=1,000円  製品B 1,000×3=3,000円


・製品A 製造原価=2,000+1,000+3,000+3,000+6,000+1,000=16,000円  16,000÷100=160円/個
・製品B 製造原価=4,000+2,000+6,000+4,000+10,000+3,000=29,000円  29,000÷200=145円/個

ABC/ABM/ABB の採用率

・2020 年に、アンケートおよびインタビューにより、日本企業の管理会計・原価計算に関する実態調査を実施し、
 東京証券取引所上場企業155 社からアンケートの回答。

・2011 ~ 2012 年度調査では、製造業、非製造業の全体で12.8%がABC(活動基準原価計算)を実施。

・今回の調査全体で10.1%、前回と同じ東証一部二部では9.8%であった。

・この割合には、ABM(活動基準管理)、ABB(活動基準予算)の割合を含んでいるので、ABC のみでは全体8.1%、東証一部二部共に8.0%。

・前回調査とは、質問の記述を変更しているので、単純比較はできないが、ICTの発達が、ABC の採用には寄与していないことが判明。

・製造業、非製造業を比較しても、今回の調査では、10.6%、9.6%と大きな差は生じていない。

  1993~1994年度 2001~2002年度 2011~2012年度 2020年度
製造業 11.5% 8.1% 10.3% 10.6%
非製造業 12.4% 16.9% 17.1% 9.6%
全体 11.9% 12.1% 12.8% 10.1%
回答企業数 191社 182社 187社 149社

出典:「日本企業の管理会計・原価計算 2020 年度調査
~「レレバンス・ロスト」は今なお続いている~  川野克典」P13 ,P21 より抜粋、加筆修正

筆者プロフィール
吉田 圭一
大手監査法人の2法人で監査・上場準備・アドバイザリーサービス、会計パッケージソフトウェア企業で法人税申告書等のソフトウェアの企画・設計等、外資系ERP企業でERPの導入、 外資系IT企業でコンサルティングサービス、情報通信会社でERP導入とコンサルティングサービスに従事し、現在に至る。公認会計士、システム監査技術者。