活動基準原価計算とは
活動基準原価計算は、英語のActivity-Based Costingの日本語訳で、ABCと省略されます。
ABCは、製品の製造間接費を適切に計算するために1980年代にハーバード・ビジネス・スクールのロバート・S・キャプラン教授が1980年代に提唱したものです。
ABCは、製品の製造間接費だけでなく、サービスの費用を計算するためにも活用されています。
ABCは、製造業だけでなく、建設業等の民間企業、また、官公庁でも活用されています。
活動基準原価計算に基づく計算
活動センター、または活動センターを細分化したコスト・プールを設定し、資源ドライバーに基づいて資源(製造間接費等)を集計します。
活動センター、またはコスト・プールごとの活動ドライバーに基づいて、活動を原価計算対象(各指図書等)に配賦します。
資源ドライバー
活動に対して資源(製造間接費等)を配賦するときの配賦基準
活動ドライバー
原価計算対象(各指図書等)に対して活動を配賦するときの配賦基準
ABCによる資源の配賦
・資源ドライバーにより資源を活動別に集計
ここで集計された原価が活動原価
・活動ドライバーにより活動原価を原価計算対象別に集計
ここで集計された原価が原価計算対象別の原価
活動基準原価計算の計算例
・生産量 製品A 100個 製品B 200個
・直接材料費 製品A 2000円 製品B 4000円
・直接労務費 製品A 1000円 製品B 2000円
・製造間接費 36,000円
活動別内訳 資源ドライバーによる配賦後金額
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発注活動 |
検収活動 |
組立活動 |
検査活動 |
計 |
工場管理部門 労務費 |
6,000円 |
4,000円 |
1,000円 |
1,000円 |
12,000円 |
工場減価償却費 |
2,000円 |
2,000円 |
12,000円 |
2,000円 |
18,000円 |
工場水道光熱費 |
1,000円 |
1,000円 |
3,000円 |
1,000円 |
6,000円 |
発注活動原価9,000円、検収活動原価7,000円、組立活動原価16,000円 検査活動原価4,000円
・活動ドライバー
発注回数 製品A 3回 製品B 6回
検収回数 製品A 3回 製品B 4回
組立時間 製品A 6時間 製品B 10時間
検査時間 製品A 1時間 製品B 3時間
発注活動原価
9,000÷(3+6)=1,000
製品A 1,000×3=3,000円 製品B 1,000×6=6,000円
検収活動原価
7,000÷(3+4)=1,000
製品A 1,000×3=3,000円 製品B 1,000×4=4,000円
組立活動原価
16,000÷(6+10)=1,000
製品A 1,000×6=6,000円 製品B 1,000×10=10,000円
検収活動原価
4,000÷(1+3)=1,000
製品A 1,000×1=1,000円 製品B 1,000×3=3,000円
・製品A 製造原価=2,000+1,000+3,000+3,000+6,000+1,000=16,000円 16,000÷100=160円/個
・製品B 製造原価=4,000+2,000+6,000+4,000+10,000+3,000=29,000円 29,000÷200=145円/個
ABC/ABM/ABB の採用率
・2020 年に、アンケートおよびインタビューにより、日本企業の管理会計・原価計算に関する実態調査を実施し、 東京証券取引所上場企業155 社からアンケートの回答。
・2011 ~ 2012 年度調査では、製造業、非製造業の全体で12.8%がABC(活動基準原価計算)を実施。
・今回の調査全体で10.1%、前回と同じ東証一部二部では9.8%であった。
・この割合には、ABM(活動基準管理)、ABB(活動基準予算)の割合を含んでいるので、ABC のみでは全体8.1%、東証一部二部共に8.0%。
・前回調査とは、質問の記述を変更しているので、単純比較はできないが、ICTの発達が、ABC の採用には寄与していないことが判明。
・製造業、非製造業を比較しても、今回の調査では、10.6%、9.6%と大きな差は生じていない。
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1993~1994年度 |
2001~2002年度 |
2011~2012年度 |
2020年度 |
製造業 |
11.5% |
8.1% |
10.3% |
10.6% |
非製造業 |
12.4% |
16.9% |
17.1% |
9.6% |
全体 |
11.9% |
12.1% |
12.8% |
10.1% |
回答企業数 |
191社 |
182社 |
187社 |
149社 |
出典:「日本企業の管理会計・原価計算 2020 年度調査
~「レレバンス・ロスト」は今なお続いている~ 川野克典」P13 ,P21 より抜粋、加筆修正