• 2025. 01. 29
  • 会計   
  • 管理会計   
  • 原価管理

ICSコラムシリーズ:管理会計 vol.4 第4回 「標準原価計算」

目次

実際原価計算制度と標準原価計算制度

実際原価計算制度と標準原価計算制度の概要は、以下になります。

(表4-1 実際原価計算制度と標準原価計算制度)

  実際原価計算制度 標準原価計算制度
使用する原価
実際原価
財貨の実際消費量をもって計算した原価
実際の取得価格をもって計算した原価の実際発生額
原価を予定価格等をもって計算しても、消費量を実際によって計算する限り、それは実際原価の計算
予定価格とは、将来の一定期間における実際の取得価格を予想することによって定めた価格
実際消費量×実際取得価格
or
実際消費量×予定価格等
標準原価
財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し(以下、予定消費量とします)、かつ、予定価格又は正常価格をもって計算した原価
予定消費量×予定価格 (or正常価格)
財務会計との関係 実際原価を財務会計の主要帳簿に組み入れます 標準原価を財務会計の主要帳簿に組み入れます
原価差異 原価の一部を予定価格等をもって計算した場合における原価と実際発生額との間に生ずる差額 標準原価と実際発生額との間に生ずる差額

 

 

 

標準原価算定の目的

標準原価算定の目的には、以下のものがあります。

(表4-2 標準原価算定の目的)

目的 概要
原価管理 実際原価が標準原価を超えないように統制するため
たな卸資産価額の算定 仕掛品、製品等のたな卸資産価額および売上原価の算定に使用するため
予算管理 予算とくに見積財務諸表の作成に使用するため
会計処理の迅速化 実際原価算定のために必要となる各種集計等の作業が不要
会計処理の簡便化、迅速化のため

 

 

 

標準原価の算定

標準直接材料費と標準直接労務費

標準直接材料費と標準直接労務費は、以下の内容で算定します。

(表4-3 標準直接材料費と標準直接労務費)

種類と計算式 数量と単価 概要
標準直接材料費
=標準消費量×標準価格
標準消費量
  • 科学的、統計的調査により製品単位当たりの各種材料の標準消費量
  • 標準消費量は、通常生ずると認められる程度の減損、仕損等の消費余裕を含む
標準価格
  • 予定価格又は正常価格
標準直接労務費
=直接作業の標準時間×標準賃率
標準時間
  • 作業研究、時間研究その他経営の実情に応ずる科学的、統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間
  • 通常生ずると認められる程度の疲労、身体的必要、手待等の時間的余裕を含む
標準賃率
  • 予定賃率又は正常賃率

 

 

 

製造間接費の標準

製造間接費の標準は、これを部門別に算定します。

部門別製造間接費の標準
・一定期間において各部門に発生すべき製造間接費の予定額
・部門間接費予算として算定
・固定予算又は変動予算として設定


製造間接費の標準 固定予算と変動予算

固定予算と変動予算

(表4-4 固定予算と変動予算)

種類 概要
固定予算
  • 予算期間において予期される一定の操業度に基づいて算定
  • 一定の限度内において原価管理に有益
  • 製品に対する標準間接費配賦率の算定の基礎
変動予算
  • 製造間接費予算を、予算期間に予期される範囲内における種々の操業度に対応して算定した予算
  • 実際間接費額を当該操業度の予算と比較して、部門の業績を管理可能

 

 

 

製造間接費の標準 固定予算

固定予算は、操業度に関わらず予算額は、常に一定です。

生産設備を一定とした場合におけるその利用度のことです。

操業度は、原則として直接作業時間、機械運転時間、生産数量等間接費の発生と関連ある適当な物量基準によって、これを表示します。


製造間接費の標準 変動予算

変動予算は、実査法、公式法等により算定します。

(表4-5 変動予算)

種類 概要
実査法
  • 一定の基準となる操業度(以下これを「基準操業度」という。)を中心として、予期される範囲内の種々の操業度を、 一定間隔に設け、各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記
  • この場合、各操業度に応ずる間接費予算額は、個々の間接費項目につき、各操業度における額を個別的に実査して算定
  • この変動予算における基準操業度は、固定予算算定の基礎となる操業度
公式法
  • 固定費は、操業度の増減にかかわりなく一定
  • 変動費は、操業度の増減との関連における各変動費要素又は変動費要素群の変動費率をあらかじめ測定
  • これにそのつどの関係操業度を乗じて算定

 

 

 

公式法による変動予算

公式法による変動予算の算定:製造間接費を変動費と固定費に分けて予算を算定する方法

・製造間接費予算=変動費率×操業度+固定費


実査法による変動予算

実査による変動予算の算定

・各操業度における製造間接費の予算額を調査して予算を設定する方法

標準製品原価の算定

標準製品原価は、以下の計算式で算定します。

標準製品原価=標準直接材料費+標準直接労務費+標準間接費配賦費
・標準直接材料費=標準消費量×標準価格
・標準直接労務費=直接作業の標準時間×標準賃率
・標準間接費配賦費=直接作業等の標準時間×標準間接費配賦率

標準原価計算制度における原価差額

原価差額の種類

(表4-6 標準原価計算制度における原価差額の種類)

標準原価差異の種類 計算式
材料受入価格差異 (標準受入価格ー実際受入価格)×実際受入数量
直接材料費差異 価格差異 (標準消費価格ー実際消費価格)×実際消費数量
数量差異 (標準消費数量ー実際消費数量)×標準消費価格
直接労務費差異 賃率差異 (標準賃率ー実際賃率)×実際作業時間
作業時間差異 (標準作業時間ー実際作業時間)×標準賃率
製造間接費差異 (製造間接費差異) (製造間接費の標準額ー製造間接費の実際発生額)
予算差異 実際作業時間における予算額ー実際発生額(※)
変動費能率差異 (標準作業時間ー実際作業時間)×変動費率(※)
固定費能率差異 (標準作業時間ー実際作業時間)×固定費率(※)
操業度差異 (実際作業時間度ー基準操業度)×固定費率(※)

(※)原価計算基準では、具体的な計算方法の記載はありません。

直接材料費差異

直接労務費差異

製造間接費差異
筆者プロフィール
吉田 圭一
大手監査法人の2法人で監査・上場準備・アドバイザリーサービス、会計パッケージソフトウェア企業で法人税申告書等のソフトウェアの企画・設計等、外資系ERP企業でERPの導入、 外資系IT企業でコンサルティングサービス、情報通信会社でERP導入とコンサルティングサービスに従事し、現在に至る。公認会計士、システム監査技術者。