- 2024. 10. 15
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制度会計とは?管理会計との違いや円滑に実施するためのポイントを解説
企業会計は、企業の財務・経営状況を外部に報告する役割を担う「財務会計」と、企業が自身の経営管理を行うために利用する「管理会計」に大別されます。「制度会計」は財務会計の一部で、法律に基づき実施されます。本記事では、制度会計の定義や目的、管理会計との違いを解説するとともに、関連する法規や、適正に実施するためのポイントについて詳しく説明します。
- 目次
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制度会計とは
制度会計とは、企業が株主、投資家、債権者などの社外の利害関係者に対して行う財務会計のうち、会社法や金融商品取引法などの法律に基づいて実施される会計のことを指します。
制度会計の主な目的は、企業の財務情報を社外の利害関係者に提供することにあります。財務諸表の作成や開示、税務申告などが主な業務となります。企業は、財政状態や経営成績を正確に開示することで、社外の利害関係者に対する説明責任を果たすことができます。
制度会計は財務会計の一部であり、財務会計は制度会計よりも広い概念です。財務会計には、法律に基づく制度会計以外にも、企業が自主的に行う情報開示が含まれます。例えば、企業が自社のウェブサイトや報告書で、法律で義務付けられていない詳細な財務データや経営方針を公表することは、制度会計ではありませんが、財務会計の一部といえます。
財務会計については、後述の管理会計と合わせて「財務会計と管理会計の相違点とは?目的や機能の違いをわかりやすく解説」でも詳しく解説しています。
管理会計との違い
管理会計とは
管理会計とは、経営者の意思決定を支援するための会計です。経営分析や予実管理、原価管理、資金繰り管理など、様々な手法を用いて企業内部の経営管理に役立つ情報を経営者に提供します。
管理会計には法的な規制がないため、企業は自社の状況に合わせて柔軟に設計・運用することができます。経営者は意思決定に必要な情報を適時に入手できるようになるため、多くの企業で導入が進んでいます。
管理会計における経営分析・予実管理については、下記の記事で詳しく解説しています。
制度会計と管理会計の違い
制度会計と管理会計の大きな違いは、次の2つの観点から説明できます。
利用目的
制度会計は、株主、投資家、債権者など社外の利害関係者に対し、財務状況や経営成績の開示、税務申告などを行うことを目的としています。このため、制度会計では客観性が重視され、過去の財務情報を正確に記録することに主眼が置かれています。
一方、管理会計は社内の経営者や管理職に対し、意思決定の支援や業績評価、コスト管理など、経営管理に役立つ情報を提供することを目的としています。そのため、管理会計では情報の適時性が重視され、将来の予測や意思決定に役立つ情報の提供に重点が置かれています。
関連法規の有無
制度会計は会計基準や税法などの法律や規則に従って行われ、会計期間は1年、半年、四半期などの期間に定められています。上場企業の場合は、作成された財務諸表の公開が義務付けられています。
一方、管理会計は企業独自の方法で行われ、法的な規制はありません。企業の実情に合わせて柔軟に設計・運用されます。会計期間も企業の必要に応じて設定され、月次、週次など、より短い期間で行われることが多くあります。
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制度会計 |
管理会計 |
利用者 |
社外の利害関係者 |
社内の経営者や管理者 |
目的 |
財務状況や経営成績の開示 |
意思決定の支援、業績評価、コスト管理など |
規則 |
会計基準や税法などの法律や規則に従う |
企業独自の方法で行われ、法的な規制はない |
会計期間 |
1年、半年、四半期など法律で定められた期間 |
企業の必要に応じて設定(月次、週次など) |
制度会計に関連する法規
制度会計を実施する上で、関連する法規を理解し、それらを遵守することが重要です。ここでは、制度会計に関連する主な法規について詳しく説明します。
会社法
会社法は、株式会社の組織や運営に関するルールを定めた法律です。会計の観点からは、財務諸表の作成と開示に関する規定が重要です。株式会社に対して、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書などの財務諸表の作成と、定時株主総会での報告を義務付けています。これにより、株主や債権者など、企業の利害関係者に対する情報提供と経営の透明性確保を図っています。
金融商品取引法
金融商品取引法は、株式や社債などの金融商品の取引に関するルールを定めた法律で、上場企業の財務報告に関する規定を定めています。具体的には、投資家保護と資本市場の健全性維持を目的として、有価証券報告書や半期報告書などの提出を義務付けています。これらの報告書には、財務諸表や事業の状況などの詳細な情報が記載され、投資家の意思決定に重要な役割を果たします。
法人税法
法人税法は、法人の所得に対する税金の計算や申告の手続きを定めた法律です。課税所得の計算方法や申告書の記載事項、納税期限などを規定しています。制度会計で作成された財務諸表は、法人税の計算の基礎となります。
制度会計を円滑に実施するためのポイント
近年、企業会計を取り巻く環境は大きく変化しており、制度会計の円滑な実施はますます重要になっています。ここでは、円滑な制度会計を実施するためのポイントを解説します。
適正性の確保
会計基準や税法などの規定に基づいて適正な会計処理を行うことが重要です。正しい勘定科目で仕訳を行い、証憑書類を適切に管理できるよう社内体制を整備することは極めて重要です。会計基準や税法は頻繁に改正されるため、規定の変更を常にモニタリングし、速やかに社内の処理体制に反映させることが求められます。
また、法規制の遵守の高い意識を持ち続けることも忘れてはなりません。社外の利害関係者からの信頼を獲得し、企業価値の維持につながります。
業務プロセスの効率化
制度会計を円滑に実施するには、業務プロセスの効率化が不可欠です。昨今、企業には決算の早期化が求められており、迅速で正確な財務諸表の作成と開示の重要性がますます高まっています。
業務プロセスを効率化するには、プロセス自体の見直しと、自社に適した会計ソフトの導入が有効な手段となります。業務の自動化・省力化を進めることで、制度会計の処理の効率化を図ることができるでしょう。
業務プロセスの効率化は、制度会計だけでなく、管理会計の高度化にも大きく貢献します。正確でタイムリーな財務データを活用することで、経営分析の精度が向上し、経営者はより戦略的な意思決定を行うことが可能になります。
決算早期化の解決方法については、「個別・連結決算早期化の実現に向けて、現場のボトルネックと解決策を解説」でも詳しく解説しています。
制度会計の円滑な実施は企業の意思決定を加速する
制度会計は、企業の財務状況を適切に管理し、社外の利害関係者に説明責任を果たすための重要な役割を担っています。制度会計の役割を十分に理解し、適正性の確保と業務プロセスの効率化といったポイントを押さえて円滑に実施していくことが必要です。円滑な運用は、管理会計の精度を高め、企業の経営管理と意思決定の質を高めることができるでしょう。