「原価計算基準」では、「原価差異とは実際原価計算制度において、原価の一部を予定価格等をもって計算した場合における原価と実際発生額との間に生ずる差額、ならびに標準原価計算制度において、
標準原価と実際発生額との間に生ずる差額(これを「標準差異」となづけることがある。)をいう。」と記載されています。
今回は、最初に「原価計算基準」の原価差異のうち「標準原価と実際発生額との間に生ずる差額(これを「標準差異」となづけることがある。)」をご説明し、次にERPでの対応例をご紹介します。
1. 「原価計算基準」の標準差異について
標準原価と実際発生額との間に生ずる差額である標準差異には、材料受入価格差異、直接材料費差異、直接労務費差異、製造間接費差異があります。
材料受入価格差異とは、材料の受入価格を標準価格をもって計算することによって生ずる原価差異をいいます。
直接材料費差異とは、標準原価による直接材料費と直接材料費の実際発生額との差額をいい、これを材料種類別に価格差異と数量差異とに分析します。
直接労務費差異とは、標準原価による直接労務費と直接労務費の実際発生額との差額をいい、これを部門別又は作業種類別に賃率差異と作業時間差異とに分析します。
製造間接費差異とは、製造間接費の標準額と実際発生額との差額をいい、原則として一定期間における部門間接費差異として算定して、これを能率差異、操業度差異等に適当に分析します。
それぞれどのように計算するのかは、以下の図をご覧ください。
標準原価差異
標準原価差異の種類 | 計算式 |
材料受入価格差異 |
(標準受入価格ー実際受入価格)×実際受入数量 |
直接材料費差異 |
価格差異 |
(標準消費価格ー実際消費価格)×実際消費数量 |
数量差異 |
(標準消費数量ー実際消費数量)×標準消費価格 |
直接労務費差異 |
賃率差異 |
(標準賃率ー実際賃率)×実際作業時間 |
作業時間差異 |
(標準作業時間ー実際作業時間) ×標準賃率 |
製造間接費差異 |
(製造間接費差異) |
(製造間接費の標準額ー製造間接費の実際発生額) |
予算差異 |
実際作業時間における予算額ー実際発生額(※) |
変動費能率差異 |
(標準作業時間ー実際作業時間)×変動費率(※) |
固定費能率差異 |
(標準作業時間ー実際作業時間)×固定費率(※) |
操業度差異 |
(実際作業時間度ー基準操業度)×固定費率(※) |
(※)原価計算基準では、具体的な計算方法の記載はありません。
直接材料費差異の価格差異、数量差異については、以下の図をご覧ください。
直接材料費差異
直接労務費差異の賃率差異と作業時間差異については、以下の図をご覧ください。
直接労務費差異
製造間接費差異の予算差異、能率差異、操業度差異については、以下の図をご覧ください。
製造間接費差異
続いて標準原価計算制度における原価差異の会計処理について説明します。
数量差異、作業時間差異、能率差異等であって異常な状態に基づくと認められるものは、これを非原価項目として処理します。
上記以外の場合は、実際原価計算制度に基づく処理によります。具体的には、以下の内容です。
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材料受入差異を除き原則として当年度の売上原価に賦課します。
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材料受入価格差異は、当年度の材料の払出高と期末在高に配賦し、材料の期末在高については、材料の適当な種類群別に配賦します。
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予定価格等が不適当なため、比較的多額の原価差異が生ずる場合、直接材料費、直接労務費、直接経費および製造間接費に関する原価差異の処理は、次の方法によります。
- (個別原価計算の場合) 次の方法のいずれかによります。
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・当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に指図書別に配賦します。
・当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に科目別に配賦します。
- (総合原価計算の場合)
- ・当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に科目別に配賦します。