- 2024. 06. 27
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ペーパーレス化を進める方法とは?メリットや注意点、ポイントを紹介
紙文書からの脱却は、現代の企業にとって不可欠なデジタルトランスフォーメーションの一環です。しかし、ペーパーレス化は単なる文書の電子化だけではありません。ペーパーレス化で成果を上げるためには具体的な方法、メリット、注意点、そして潜在的な課題を理解し対処していくことが必要です。本記事では、ペーパーレス化を実践し、効果的な運用を確保するため情報を提供します。これからのオフィス運営に向けて一歩を踏み出すために準備しましょう。
- 目次
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ペーパーレス化のメリット
全体として、ペーパーレス化は持続可能な経営に貢献し、企業の競争力向上に寄与します。ペーパーレス化の具体的なメリットを確認します。
環境への配慮
紙文書の使用を減らすことは、森林保護や廃棄物削減に寄与し、環境への負荷を軽減します。
業務の効率化
電子フォーマットは文書の検索、共有、保存を容易にし、業務プロセスの合理化に役立ちます。電子文書は、場所にとらわれずにパソコンやスマートフォンなどからアクセスが可能であるため、スムーズな情報共有にもつながります。紙資料を印刷したり、整理したりする手間もかかりません。
コスト削減
用紙代や保管スペースにかかるコストを削減できるほか、ファイリングや紙文書の管理にかかる人的コストも削減可能です。
セキュリティ強化
多くのデータ管理ツールでは、データを扱える管理者を厳格に設定でき、データの閲覧や修正などのログが残ります。電子化したデータにパスワードやアクセス制限などをかけることで、情報漏えいのリスクが下がります。
保存性の向上
クラウドストレージの活用やデータバックアップによる保存性が向上します。紙資料のように経年劣化したり、保管箇所の火災や水害などでデータを失ったりするリスクを低減できるのも魅力です。
ペーパーレス化する方法
これから新規でペーパーレス化を行う場合と、既存の紙書類をペーパーレス化する場合に分けてペーパーレス化の方法を紹介します。
新規で書類をペーパーレス化する方法
最初から電子化(ペーパーレス化)することで、そもそも紙書類を発生させないように取り組みます。
業務ルールの変更
電子ファイルを印刷せずに、PDFデータにしてクラウドストレージ等に保存することは、ペーパーレス化への大きな一歩です。FAXについても、同様にPDFデータに出力しましょう。
閲覧環境を整える
閲覧時は、タブレットやPCモニターを使用します。製造現場であればタブレット、オフィスワークであればPCモニターというように閲覧環境を整備します。一台の機器で業務上の膨大な資料が見られると、利便性が高まるのと同時に建物スペースの有効活用につながります。
帳票類をやり取りする仕組みを整える
請求書や見積書などの帳票は、メールやビジネスチャット、電子契約サービスなどを利用してやり取りします。パソコンで作成した帳票を印刷せずに、電子データのままで送ることで、郵送の手間も省けます。
システムやツールの活用
大規模なペーパーレス化を進めるには、バックオフィス業務に会計システムや人事管理システムなどの基幹システムを導入します。また、各種申請や稟議などの承認作業では、組織内の業務手続きを電子化できるワークフローシステムを利用することが有効です。別々のシステム・ツールを活用する場合は連携できるものを選択します。
既存の書類をペーパーレス化する方法
すでにある紙の書類をペーパーレス化するには、以下のような対応があります。
OCRの利用
紙の書類を電子データ化できる技術がOCR(Optical Character Recognition)です。文字をスキャナで読み取って電子化することが可能です。最近ではスマホのカメラ機能を利用してスキャンするOCRアプリも登場し、手軽に電子化が可能となりました。
外部サービスの利用
スキャニングサービスを提供する専門業者もあり、保管されている大量の書類をまとめて電子化してもらうことも可能です。アウトソーシングで電子化の代行を依頼するという方法もあります。
ペーパーレス化が進まない要因
コロナ禍で大きな変化が生じたとはいえ、日本では長らく紙文書がビジネスにおいて重要視されてきました。伝統的な文化やビジネス習慣の影響により、電子化への抵抗感が存在します。
また、セキュリティとプライバシーの懸念も一因です。電子データの情報漏えいは多発しており、企業は機密情報の保護を重視しています。電子データのセキュリティ確保が必要で、セキュリティ対策に関連するコストと労力がかかります。
さらに、過渡期の課題も存在します。既存の紙管理から電子データへ移行するには、従業員へのトレーニングも必要です。このように、日本の企業におけるペーパーレス化の遅れは、文化的要素やセキュリティ要素といった多くの要因が絡み合っています。これらの課題に対処し電子化への意欲を高めるためには、セキュリティや教育まで俯瞰した、戦略的なアプローチが必要です。
ペーパーレス化を進めるためのポイント
効率よくペーパーレス化を進めるためのポイントを紹介します。
現状の課題を洗い出す
紙書類における業務フローについて現状の問題点を洗い出し、ペーパーレス化によって問題解決につなげます。ペーパーレス化によって負担の削減やミスの低減が実現すれば、変革の文化を育むことにつながります。
ペーパーレス化の目的と範囲を決める
業務の効率化やコストカット、テレワーク推進といったペーパーレス化の目的と対象範囲を決めたうえで実行に移ります。いきなりすべてを対象範囲とするよりも、効果の高そうな部署や部門を優先的に選択することをおすすめします。予算や労力などを考慮して、段階的に進めるといいでしょう。
ペーパーレス化のルールづくり
組織におけるペーパーレス化では、社内ルールを策定しておくことが大切です。ルールを整備しないままでは、混乱が生じる恐れがあります。ファイル名の付け方や保存形式、共有方法などを決めて、関係者に周知・浸透させます。また、必要に応じてトレーニングも実施します。
ペーパーレス化の検証と改善
実際に運用が始まったら、定期的に検証し、必要に応じて対応策を講じなければなりません。ペーパーレス化による生産性の向上は、処理時間やミスの発生率を比較したり、従業員からのアンケートを取ったりすることで検証します。システム・ツールを導入した場合は、満足度や操作方法についても聞き取り、改善点を洗い出しましょう。
経営者も含め全社的に取り組む
紙の書類は業務のあらゆる所で使われており、ペーパーレス化に対応できる部署は社内すべてといっていいでしょう。そのため、一部の部署だけでペーパーレス化を推進しようとしても、効果を得にくいです。経営者が率先し、全社的にペーパーレス化の重要性を周知しましょう。
ペーパーレス化できない書類もある
例えば、公正証書が必要な事業用定期借地契約は紙で契約書を作成する必要があります。また、電子帳簿保存法のスキャナ保存において、「決算関係書類・帳簿」スキャナ保存の対象外(※)となっています。ただし、今後電子化が解禁される可能性もありますので、随時情報を確認していきましょう。
※電子帳簿保存法に対応した会計システムを用いて、電子的に作成することは可能
取引先の意向を聞くことも大切
社外との取引に関わる書類については、一方的にペーパーレス化や電子契約を導入できませんので、取引先と相談する必要があります。多くの企業でペーパーレス化の取り組みは進んでいますが、企業ごとに進みに差があるので、取引先と足並みをそろえなければなりません。
ペーパーレス化を進めるのに取り入れたいツールやサービス
ペーパーレス化を助けるツールやサービスを「紙データの電子化」「クラウドシステム・ツール」「環境整備」の3つの視点で説明します。
紙データの電子化
スキャナ
これまで紙で管理していた書類を電子化するために、電子化の第一歩としてスキャナを導入します。オフィスに設置してある複合機を使用することも可能ですが、小型のスキャナであればデスク上で作業できます。
AI-OCR
OCRの導入では、読み取り精度の高いAI-OCRがおすすめです。AI技術を用いた機械学習やディープラーニング(深層学習)によって、文字の補正結果を学習し、文字認識率を高められます。手書き文字の認識精度も高く、紙の書類をパソコンで手入力する作業や、保管している大量の紙資料をデータ化する作業などでは、特に作業の効率化が見込めます。
RPA(Robotic Process Automation)
人間がパソコン上で行う入力業務を自動化する技術がRPAです。さまざまな用途がありますが、例えば格納プロセスを登録することで、スキャンした情報を適切なシステムやストレージに格納する作業を自動化できます。
クラウドシステム・ツール
オンラインストレージ
電子化したデータの保存場所は、オンラインストレージがおすすめです。オンライン上なら、IDとパスワードがあればいつでもどこでもアクセスできて便利です。テレワーク中や出張先など、遠隔地でも利用しやすいです。
ビジネスチャット
ビジネスチャットは、コミュニケーションツールとしての活用だけでなく、電子ファイルのやり取りにも利用できます。さらに、オンラインストレージに保存したデータのリンク先をチャットで共有するという使い方もできます。
専門業務のクラウドシステム・ツール
会計システム、人事評価システム、給与計算システムなど、経理や労務などの専門業務をオンライン上で行えるシステム・ツールも登場しています。
環境の整備
業務用のタブレットやノートPCを準備
業務に必要な機器を確保します。営業先や外出先では、タブレットやノートPCを活用しましょう。商談では、事前にメールにファイルを添付して送ることで、先方があらかじめ資料を確認できます。また会議資料を電子データにすれば、会議の直前まで変更や修正が可能です。
VPN(Virtual Private Network)
仮想専用網と呼ばれる技術です。通信事業者の閉域ネットワークやインターネットといった公衆回線を経由します。そのため、専用線よりもコストを抑えつつ、セキュリティの高い通信が可能です。主に「認証」「暗号化」「トンネリング」「カプセル化」といった技術で成り立っています。企業における拠点間の情報共有のほか、テレワークや外出先などから社内LANにアクセスする場合に、安全性を高めることが可能です。
ペーパーレス化を実現するために戦略を立てよう
ペーパーレス化は現代のビジネス環境において不可欠な要素ですが、スムーズに実現するためには明確な戦略に基づいた取り組みが必要です。本記事ではペーパーレス化のメリット、具体的な方法やポイントについて述べました。紙からデジタルへの移行は一度で完了するものではなく、事前のルール作り、段階的な実施、従業員へのトレーニングなど、丁寧にプロセスを踏むことが成功の鍵です。
ペーパーレス化は、生産性、コスト削減の面で多くの利点をもたらします。業務効率化の観点からいえば、ルール作りや導入検討の過程において業務の洗い出しができる点も大きなメリットでしょう。
ペーパーレス化を進めるツールやサービスも少なくありません。ビジネスを進化させるために、今こそ行動を起こしましょう。