• 2024. 06. 27
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企業会計原則とは?
経理担当者が押さえておきたい7つの一般原則を解説!

企業会計原則とは?経理担当者が押さえておきたい7つの一般原則を解説!

企業会計原則とは、すべての企業が守るべき会計のルールがまとめられたものです。この原則に沿って会計処理にあたることで、会計業務の公正性を担保できます。原則自体には法的な拘束力はないものの、会社法や税法など関連する法令によるペナルティを受ける場合もあるため、経理担当者は必ず理解しておくべき事柄です。そこで今回は、企業会計原則の概要や、なかでも重要視されている7つの一般原則について詳しく解説します。

目次

企業会計原則は企業が守るべき会計のルール

企業会計原則とは、すべての企業が守るべきとされている会計の共通ルールです。はじめに、概要や構成内容、企業会計基準との違いをしっかりと確認しておきましょう。

企業会計原則の概要

企業会計原則は、財務諸表を作成する際に守るべき原理原則という位置付けです。日本では、財務諸表の作成にあたってさまざまな原則が作成されていました。しかし、重要な判断材料となる財務諸表が企業ごとに異なる原則のもと作成されてしまうと、利害関係者は正しい評価や判断ができません。そこで、1949年に旧大蔵省の経済安定本部・企業会計制度対策調査会(現在の金融庁・企業会計審議会)によって一定の基準が取りまとめられることになりました。

最終的にまとめられた企業会計原則は、それまでの企業会計実務における慣習のなかから一般に公正妥当と認められるルールが要約されたものです。法令ではないため法的な拘束力は持たないものの、会計監査においても従うべき原則とされており、企業会計のベースとして押さえておくべき知識だといえます。

企業会計原則の構成

企業会計原則は、次の3つの原則から成っています。

  • 一般原則
  • 損益計算書原則
  • 貸借対照表原則

一般原則

一般原則では、企業会計全般における理念や指針が包括的に述べられていることから、包括的原則とも呼ばれています。貸借対照表と損益計算書のどちらの作成にも共通する基本的な考え方が示されていることから、3つのなかでも最上位に位置付けられている原則です。また、一般原則は、さらに7つの細かい原則(※詳細については後述)から構成されています。

損益計算書原則

損益計算書原則は、損益計算書の作成において収益と費用の会計処理方法や表示基準を示したものです。当期純利益の計算方法について、その会計期間すべての収益とそれに対応するすべての費用を経常利益に記載したうえで、特別損益を調整して表示することを定めています(総額主義の原則)。

貸借対照表原則

貸借対照表原則は、貸借対照表の作成において資産・負債・資本の会計処理方法や表示基準を示したものです。

貸借対照表の記載方法について、貸借対照表日におけるすべての資産・負債・資本を表示しなければならないと定めています(総額主義)。これが守られることで、利害関係者が企業の財政規模を正しく把握できるのです。

企業会計基準との違い

企業会計基準とは、財務諸表を作成する際のルールです。財務諸表を作成する際は、会計基準のルールに沿って作成することとされています。しかし、企業会計原則では具体的な会計処理についてあまり触れられていません。そのため、実務の中心となるのは企業会計基準です。

日本で認められている会計基準には、以下の4つがあります。


  • 日本会計基準
  • 日本独自の会計基準


  • 米国会計基準
  • 米国で採用されている会計基準。米国で上場している日本企業はこちらに基づいて財務諸表を作成


  • IFRS(国際会計基準)
  • 国際会計基準審議会が世界共通の会計基準を目指して作成したもの。2005年から、EU域内の上場企業に対して導入が義務化


  • J-IFRS
  • 国際会計基準の日本版

【企業会計原則】7つの一般原則

先に触れたとおり、企業会計原則の一般原則には、さらに7つの原則が設定されています。行政や税理士などが、会計業務が適切に行われているか判断する際の基準となるため、この機会に正しく理解しておきましょう。

1.真実性の原則

『企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない』

企業会計の第一目的が「財政状態や経営成績の真実な報告」であるため、7つの原則のなかでも最も重要だとされています。財務諸表は、客観的に見て真実の内容であり、虚偽の報告をしてはなりません。ここでいう「真実」とは、相対的真実です。企業会計には複数の処理方法が認められているケースもあるため、企業会計基準に合った適切な真実が求められます。

2.正規の簿記の原則

『企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない』

正確な会計処理による、正確な帳簿作成を一部ではなくすべての取引に要請しています。正規の簿記とは、一般的には複式簿記のことで、網羅性・立証性・秩序性の3要件を満たすものです。複式簿記による記録とは明記されていないものの、簿記の原則を実現できるのは複式簿記が該当します。ただし、利害関係者に影響を及ぼさないものについては、簡易な方法であっても認められます。

3.資本取引・損益取引区分の原則

『資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない』

そもそも、資本取引(資本を直接増減させる取引)と損益取引(収益や費用の生じる取引)はまったく異なる取引であるという立場に立つもので、投下資本と成果としての利益を分けることを目的としています。

特に、資本剰余金(出資者からの払込資本)と利益剰余金(利益のうち配当に回らなかった留保利益)を混同してはなりません。両者には「維持しなければならないもの」と「分配可能なもの」という違いがあり、区別しなければ、利害関係者に誤解を招きかねないためです。加えて、資本の不正使用や利益隠しも防げます。

4.明瞭性の原則

『企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない』

利害関係者が財務諸表を正しく判断するためには、わかりやすく表示されていることが必須とされています。具体的な方法としては、総額主義や費用・収益の対応表示が挙げられます。さらに、財務諸表には明示されていないものの、重要な会計方針や後発事象があった場合には注記して適正開示する必要があります。


【重要な会計方針や後発事象の例】

  • 災害による損害の発生
  • 企業の合併
  • 多額の増資 など

5.継続性の原則

『企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない』

一度採用した会計処理の原則や手続方法は、基本的に毎期継続して適応しなければならないとしており、利益操作の排除と決算書の適切な比較を実現することを目的としています。代表例として挙げられるのは、固定資産の減価償却方法の選択(定額法や定率法など)などです。ただし、正当な理由がある場合は変更可能(財務諸表への注記は必要)です。

6.保守主義の原則

『企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない』

「適当に健全な会計処理」とは、企業財務上で不利な影響を与えかねないものは明確に記録しておくという保守主義による会計処理を指しています。例えば、売掛金の貸し倒れを予測して貸倒引当金を計上することが該当します。起こり得る不利益情報を早めに利害関係者に提供するのが目的です。

ただし、保守的な姿勢が度を超えると、一般原則で最重要視されている真実性の原則に反しかねません。過度な保守主義には注意が必要です。

7.単一性の原則

『株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない』

財務諸表は、複数の目的のために異なる形式でそれぞれ作成しなければならないときがあります。目的に応じて形式は変更できるものの、会計記録の内容は変えてはいけないこと明示し、いわゆる二重帳簿を禁止している原則です。

企業会計原則を守らない場合はどうなるのか

企業会計原則だけでは法的拘束力はないため、違反による直接的なペナルティは存在しません。しかし、企業会計原則は金融商品取引法や会社法、税法などと密接に関わっており、これらでは一般に公正妥当な会計基準や慣行に従うべきと定められています。

つまり、企業会計原則を守らないということは、意図せず関連法令に接触するおそれがあるということなのです。状況次第では刑事罰や行政処分(業務改善命令、業務停止命令など)が下ることも考えられます。

企業会計原則を押さえて適切な会計処理を!

一般に公正妥当な企業会計の慣行を要約した企業会計原則は、現在でもすべての企業が守るべき大切なルールとされています。法的拘束力は持たないものの、会社法や税法などと密接に関係しているため、企業の経理担当者であれば押さえておくべき知識です。

しかし、経理業務の経験が豊富な担当者をもってしても、会計原則に基づいた正確な処理を手作業で行うことは簡単ではありません。そこでおすすめなのが、会計システムの導入です。会計処理を自動化し、正確・スピーディーに業務を進めましょう。会計システムの導入についてお悩みの際は、価値ある会計システムを提供するICSパートナーズにご相談ください。