- 2024. 06. 27
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ESG経営とは?国内外の代表事例紹介と基礎知識やメリット・注意点
ESG経営とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの要素を重視した企業経営手法です。SDGsの浸透やESG投資の活性が進む現在、企業においても社会や環境問題にも貢献し得る経営が求められるようになってきています。本記事では、ESG経営の基礎知識やメリット、注意点を解説し、国外と国内それぞれから代表事例を紹介します。
- 目次
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ESG経営とは|ESGに配慮した持続可能な経営
ESG経営とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの要素を意識しながら持続可能な経営を行うことです。
ESGが生まれた背景
上記3要素の頭文字から成る「ESG」が注目された契機は、2006年の国連において「責任投資原則(PRI:Principles for ResponsibleInvestment)」において取り上げられたことです。責任投資原則とは、機関投資家が投資先企業の環境・社会・ガバナンスに関して責任ある投資行動をとるという考え方です。
近年では企業側も「ESG」の重要性を鑑み、多くの企業が積極的にESG経営に取り組んでいます。
ESG経営の具体例
ESGの各要素にはさまざまな社会課題があり、それらに企業が取り組むことで、長期的な成長に寄与するとされています。取り組み例は次のとおりです。
【Environment(環境)】
- 環境保全への取り組み
- 再生可能エネルギーの導入・活用 など
【Social(社会)】
- 人権対策
- ダイバーシティの推進
- 労働問題の改善
- ワーク・ライフ・バランスの確保
- 地域社会への貢献 など
【Governance(企業統治)】
- 法令遵守
- 不正や不祥事の防止
- 正確な情報開示、透明性の確保 など
ESG経営と似た用語
ESGには似た概念の言葉がいくつか存在しており、混同されているケースも少なくないようです。ここで今一度、それぞれの用語の意味やESG経営との違いを確認しておきましょう。
ESG投資|ESG経営の要素を含めた投資判断
ESG投資とは、業績や財務状況に加えてESGの3要素が判断基準に含まれる投資手法のことです。ESGへ配慮する企業に優先的に投資を行うもので、近年、企業投資のトレンドになりつつあります。つまり、企業はESG経営を意識することでESG投資の対象となる可能性が高まるのです。
SDGs|持続可能な開発目標
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、2030年までに達成すべき持続可能な開発目標のことです。貧困や経済格差、環境問題等などの幅広い社会問題の解決を目指すもので、2015年の国連サミットで採択されました。17個のゴールと169個のターゲットから構成されており、「地球上の誰一人として取り残さない」ことを誓うものです。
持続的な社会の構築を目標とするSDGsは、長期的な成長を目指すESGとの類似点がありますが、以下の違いがあります。
- SDGsは目標であり、ESGは活動・概念である
- SDGsには2016年から2030年までの15年間という期限があるが、ESGにはない
- SDGsの範囲は社会全般の広範にわたるが、ESGは経済・投資を目的としたもの
CSR|企業の社会的責任
CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、企業の社会的責任を意味する言葉です。国際標準化機構により、「ISO26000」という規定が定められています。
CSRで企業に求められる主な社会的責任は以下のとおりです。
- 法令遵守
- 利害関係者への説明責任
- 環境保護活動・社会貢献活動
CSRにおける社会責任とは、企業が利益だけを追求するのではなく、さまざまな社会課題へ配慮することと、それらに関する説明責任を指しています。説明責任の対象は従業員や取引先だけでなく、地域や消費者なども含まれます。広く社会に対する責任を持つとの観点は、ESG経営と近いものがあるでしょう。
SRI|社会的責任投資
SRIとは、Socially Responsible Investmentの略で、社会的責任投資と訳されます。投資先を選ぶ際に、企業が社会的・倫理的な面を重視して社会的責任(CSR)を果たしているかどうかも考慮する投資手法のことです。
SRIとESG経営は近い関係にあるといえますが、SRIではコンプライアンスや倫理面も投資の判断材料に含まれます。
ESG経営が注目される2つの背景
ESG経営が注目されている背景には、以下の理由が考えられます。
投資家の評価指標として注目
ESG投資では、第三者機関がスコア化したESG指数や各企業が公表するESGへの取り組みを参考に投資の可否を判断します。ESG指数とは、第三者機関がESG経営に優れた企業を選定し評価・分析を行った株価指数(評価指数)です。ESG構成銘柄として選定された企業は、ESGへの取り組みが優良な企業として認知を得られます。
ESGは非財務の情報ですが、企業の評価基準として活用するための環境が整いつつあるのです。現状の経営状況だけでは見とおせない「企業の将来性」が推測できることから、今後も投資家から注目され続けることでしょう。
持続可能な社会の実現方法として注目
SDGsへの注目度の高まりにあわせて、ESG経営も持続可能な社会の実現方法のひとつとして認識されつつあります。事実、ESG経営の一環としてSDGsに取り組む企業は多くあり、ESGはSDGsを達成するための手段ともいえるでしょう。
ESGの概念は、人類が豊かさを求めるために経済や技術を発展させた反面、環境や社会体制には多くの課題を残したところから生まれたものです。今後も企業と社会が相互に発展し続けるためには、ESG経営が不可欠だと考えられます。
ESG経営を導入するメリットと注意点
いざESG経営を導入するとなると、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。注意点とあわせて解説します。
ESG経営導入で得られる3大メリット
ESG経営が企業にもたらすメリットには、主に以下の3つが挙げられます。
1.競争力の強化
SDGsの浸透によって、環境や社会へ配慮した取り組みを行う企業の商品やサービスが選ばれやすくなりました。
就活生が就職先を選ぶ際にもESG経営を重視する傾向にあることから、優秀な人材の確保・流出防止にもつながります。つまり、ESG経営を行っている事実そのものがブランディングとなり、競争力を高めるうえで有利に働くということです。
2.企業価値の向上
世の中をよりよいものにしようとする企業活動は、社会にとってもメリットがあるものであることから、企業評価の向上につながります。その結果、投資家からの評価も高まっていくでしょう。
3.経営リスクの軽減
ESGを経営に取り込まなければ、ESG投資において選択されず、資金調達が難しくなるかもしれません。しっかりとESG経営を行うことで資金調達の可能性が高まれば、経営の安定化につながります。
ESG経営は、企業の利益を長期的な視点で判断するため、結果が出るまでにも長い期間を要することがほとんどです。取り組む際には、あらかじめ長い目を持っておくことが重要でしょう。
また、ESG経営を行うために新たな設備投資や人材採用が必要になることもあります。新たな投資を避けてESG経営を行う場合でも、人材や手間など、一定のリソースは必要です。利益が上がらない状態が長引くと費用がかさむと考えられるため、かけられるコストを客観的に判断することで、ESG経営を継続していきましょう。
国内外のESG経営事例
最後に、実際にESG経営を行っている企業の事例を国外・国内それぞれから紹介します。
Apple株式会社
Apple株式会社は、ESGの3要素それぞれにおいて、さまざまな取り組みを実施している企業です。
環境領域では、2030年までにゼロカーボン製品をつくることを目標に掲げています。そして社会領域では、平等で多様性のある職場環境づくりを推進し、社内だけでなくサプライヤーに関しても人権を尊重した事業展開を繰り広げているのです。企業統治領域では、しっかりと経営の透明性を確保しつつ、法令順守を重視・徹底しています。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動差自株式会社は、株式会社日経BPが実施する「ESGブランド調査2023」の総合1位を獲得しました。環境、社会、ガバナンス各部門で1位になり、2020年から開始したESGブランド調査で初めて完全制覇を達成しています。
特に「環境」への取り組みに力を入れています。例えば現在、静岡県にて開発中の実験都市「ウーブン・シティ」では、カーボンニュートラルにつながる水素エネルギーの普及に取り組んでいます。具体的には、他業種の企業と協力し、水素調理に関する共同開発を行っているのです。
ESG経営で社会貢献と企業価値向上を実現しよう
ESG経営とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3要素を意識した企業経営方針のことです。結果が出るまでには長い視点で取り組む必要があるものの、社会貢献が叶い、企業の競争力や価値を上げられるというメリットがあります。
ESG投資が活性化する今、ESG経営に取り組むことは長期的・安定的に資金を得ることにもつながるでしょう。企業を成長させる手段として、導入を検討してみてはいかがでしょうか。