- 2023. 12. 06
- 業務改善・業務効率   
- グループ企業
シェアードサービスの導入ガイド!基本情報から成功のポイントまで解説
シェアードサービスは、近年の企業経営において効率化とコスト削減を実現する手法として注目を集めています。しかし、その導入は注意が必要で、デメリットにも考慮する必要があります。本記事では、シェアードサービスの基本から、成功へ導くポイントまでをわかりやすく解説します。シェアードサービスの導入を検討しているご担当者の方は、参考になさってください。
- 目次
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シェアードサービスとは
企業が異なる部門やプロセス間、あるいはグループ企業内において、共有できるビジネスサポート機能を提供する効果的な経営手法がシェアードサービスです。間接部門のサービスをシェア(共有)して、一点に集中させることを意味します。
これにより、コア事業に注力するとともに、ファイナンス、人事、ITなどの領域で、コスト効率を向上させ、専門知識を統合して活用できます。シェアードサービスの本質は、組織内のリソースを最適化し、業務の合理化を図ることです。対象となる間接部門としては、財務・経理部門や総務・人事部門のほか、情報システム、在庫・品質管理、物流、法務、監査などが挙げられます。
シェアードサービスと似た言葉に、BPO(Business Process Outsourcing)がありますが、こちらはアウトソーシングの一種です。間接部門の業務や自社でリソースの不足する業務のプロセスを一括して外部に委託します。つまり、シェアードサービスがグループ企業内での取り組みであるのに対して、BPOは部分的な外部委託です。
シェアードサービスを導入するメリット、デメリット
シェアードサービスのメリットとデメリットについて、それぞれ解説します。
シェアードサービスのメリット
シェアードサービスのメリットは多岐にわたります。
コスト削減と効率化
まず、コスト削減が挙げられます。共通の業務プロセスを一元化し、大規模な運用や生産がもたらす経済的な利益や効果が期待できます。結果として、運用コストを大幅に削減できますし、作業時間の短縮やエラーの減少が実現されるでしょう。
スキルと品質の向上
専門知識の活用も重要です。シェアードサービスでは特定の業務に専門知識を集中させ、高度なスキルを最大限に活用できます。これにより、専門家としての能力が高まります。
品質向上も魅力のひとつです。標準化されたプロセスと品質管理の強化により、サービス品質が向上することで、企業内での満足度が高まります。
組織の最適化
リソースの集約も可能です。各部門からリソースを集約し、組織全体の最適化を図ることで、運用効率を高め、効果的な活用が実現されます。これらのメリットを生かすことが、組織の競争力を強化し、戦略的な目標を達成する一助となるでしょう。
シェアードサービスのデメリット
連携や業務の切り分けが難しい
間接業務を一か所に集中させることで、近くに担当者がいなくなります。該当業務への疑問が生じたときに解消が難しくなることがあり、うまく機能させるには適切な連携が必要です。また、業務の切り分けに手間がかかる、適切さを欠いた計画やコミュニケーション不足などが原因で導入が失敗するなどのリスクもあります。
コストと運用管理に注意しなければならない
導入に際する初期コストや移行コストがかかるため、導入には一定のリソースと予算が必要です。また、シェアードサービスの運用は複雑で、適切な管理とコーディネートが求められます。業務の標準化に伴い、一部の部門や地域には適合しないケースもあり、調整が必要です。
セキュリティリスクがある
データセキュリティリスクが増加する可能性があります。業務データの共有が行われるため、慎重なセキュリティ対策とプライバシー保護が必要です。
適さない業務がある
シェアードサービスは標準化されたプロセスを提供するため、特定のニーズに合わせたカスタマイズが制約されることがあります。これにより、一部の業務プロセスが適切にサポートされない可能性が生じます。
最後に、シェアードサービスの導入に伴い、組織内の変革や文化の変更が必要です。これには抵抗が起きることがあり、変更管理やコミュニケーション戦略が必要です。これらのデメリットは組織によって異なりますが、計画的かつ適切な対策を講じることで、シェアードサービスの効果的な運用を支えることができます。
シェアードサービス導入のポイント
シェアードサービス導入には、いくつかのポイントがあります。
戦略に基づいた導入計画
メリットを最大限に引き出し、デメリットを最小限に抑えるためには、慎重な導入計画が不可欠です。対象の業務を切り分けたうえで、業務プロセスの標準化を進めていきます。また計画段階で、どの程度コスト削減が見込めるのかも数値化し、導入後に評価します。シェアードサービスは戦略的な選択であり、慎重な検討が求められます。
適している「業務」の見極め
シェアードサービスに適した業務を見極めていくことで、より大きな効果が期待できます。例えば、会計業務や給与計算は業務が専門的で、法改正も頻繁ですので、企業グループ内で法改正に個別に対応すると非効率です。一方で、業務の共通性が高く、プロセスの集約・統一化が図りやすい業務です。つまり、これらはシェアードサービスに適した、効率化しやすい業務だといえます。
企業の業務を可視化し分析すると、間接業務のみならず本業のなかにも共通化が見込める間接業務が散見しているかもしれません。下図は、企業グループ内のシステム構築ポリシーを特徴で分類した例です。
【システム構築ポリシーの分類例】
縦軸は「本業」と「間接業務」で分類していますが、横軸は業務を「スタンダード(標準的)」と「ユニーク(自社固有)」で分類しています。自社業務を分類して可視化して、切り分けやすさと効果の大きさを計ることで、シェアードサービスに向いた業務を選択していきましょう。
目標設定を軸としたコミュニケーション
シェアードサービスを成功裏に導入するためには、明確な目標設定が不可欠です。プロジェクト計画を慎重に策定し、組織内外の利害関係者との効果的なコミュニケーションを確保することが大切です。
リーダーシップによるリスク管理
強力なリーダーシップにより、導入プロセスを適切に監視し、リスクを管理する仕組みを構築することも重要です。従業員へのトレーニングと変更管理も軽視できません。段階的な展開と継続的な評価を行い、適宜修正を行うことで、シェアードサービスの導入を成功に導けます。
シェアードサービス部門の組織形態
シェアードサービス部門の組織形態としては、本社の一部門にするか、本社から切り離して子会社化するかのどちらかに分かれます
本社の一部門
本社の一部門として運営する場合、組織内の緊密な連携が促進され、企業全体のビジョンと統治が容易に実現できます。情報共有が円滑で、組織文化の一貫性が保たれます。また、運営コストの一元化と、シェアードサービスを組織のなかで強調できます。
本社はもともとグループ全体を把握しているため、サービス導入が比較的に容易です。大規模な組織変更を伴わない、従業員が順応しやすいといったメリットがある一方、従来のプロセスやシステムを踏襲するだけでは、大きな組織改革に踏み切れずに、業務を集約しただけという結果になりかねません。
子会社化
子会社として独立させることのメリットは、専門化と専任化が容易で、シェアードサービスに特化したチームが形成されることです。このアプローチは、他の事業からの独立性を高め、業務の効率化とコスト削減を迅速に実現できます。売上やコストが明確になるため、親会社としての管理がしやすく、業績に対する評価もしやすくなるでしょう。また、収益化や外部クライアントへのサービス提供の可能性もあります。
ただし子会社化では、大規模な組織改革を伴います。業務プロセスやシステムを新しく構築できる反面、システム導入やデータ統合などの初期費用がかかり、導入は容易ではありません。長期的な計画で取り組む必要があるでしょう。
どちらのアプローチを選択するかは、企業の戦略と状況に依存します。子会社化は独立性と専門性を高め、本社の一部門なら統合性と協力を重視できます。最適な選択を行うには、組織の目標や環境に適した形態を検討することが重要です。
シェアードサービスの導入は競争力を高める重要なステップ
シェアードサービスの導入は、効率向上やコスト削減を実現し、競争力を高める重要なステップです。しかし、失敗を避けるためには計画的で戦略的なアプローチが必要です。成功するためには、明確な目標設定、業務の見極め、リーダーシップの強化、適切なコミュニケーション、リスク管理などが不可欠です。
シェアードサービスは組織の変革を促進し、ビジネスの新たな可能性を開く道です。失敗から学び、成功に向けて着実に進んでいくことで、シェアードサービスの真価を最大限に引き出すことができます。絶えず進化し続けるビジネス環境において、シェアードサービスは競争力を維持し、持続的な成功を築く鍵となるでしょう。
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