• 2023. 11. 21
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収益管理に必要な3項目とは?
課題解決や成功までのステップを解説

収益管理に必要な3項目とは?課題解決や成功までのステップを解説

競争が激化するビジネス環境において、収益の最大化は企業の生存と成長に不可欠です。収益管理では、予算や売上を管理することで利益の維持や向上に取り組みます。例えば、需要予測や価格設定を通じて効果的な収益最適化を目指しますが、その実現には課題も存在します。本記事では収益管理に必要な項目とその管理方法、ステップなどについて解説します。

目次

収益管理とは

収益管理(Revenue Management)は、主に収益を最大化するための戦略的なアプローチです。特に価格戦略と需要管理に関連します。産業やビジネスによって異なりますが、収益管理は価格設定、在庫管理、需要予測などの要素を調整します。商品やサービスの需要予測と価格設定を通じて、事業、あるいはプロジェクトの収益最大化を図る戦略です。

例えば、過去データと分析で需要を予測し、在庫を最適に管理することによって、下記のような状況を回避します。

  • 予想外の追加コストと人員増加により、予算がオーバーし、赤字に陥る
  • 商品原価の増加にあたり価格調整ができず、利益率の予期せぬ低下を招いた

このように収益管理とは、商品やサービスの価格設定や在庫管理を最適化し、収益を最大化するための施策です。「予算」「原価」「売上」の要素に基づいた需要予測・価格設定などによって行うもので、さまざまな産業で応用されています。

一方、業績管理は組織全体の健全性と成果に焦点を当て、戦略的な方針とプロセスの改善を対象とします。

業績管理の詳細については「業績管理のポイントと流れ!KPI・KGIやPDCAサイクルなどが重要」をご覧ください。

収益管理の必要項目

「予算」、「原価」、「売上」は収益管理において重要な要素です。以下にそれぞれの項目について解説します。

予算

予算とは、一般的には収入・支出の計画のことを指します。ある物事を行うために必要な費用を、前もって見積もることです。また、収益管理のなかの売上予算は、特定の期間内に達成したい収益の目標を示します。

予算は事業計画や戦略の基盤となり、収益向上に向けた目標を定量化したのが売上予算です。これらの予算を設定する際には、過去のデータや市場のトレンド、競合他社の動向を考慮してリアルな目標を立てることが重要です。

原価

商品やサービスの提供にかかる直接的なコストや間接的なコストを理解することは、価格設定と収益管理の基本です。原価を正確に把握することで、価格を設定する際に収益を最大化するためのマージンを考慮できます。また、プロジェクトの途中で人件費や原材料費が変動した場合のコスト調整を迅速に行うことにもつながります。

売上

売上は実際に商品やサービスの提供によって得られる収益を示します。収益管理の目的は売上を最大化することであり、需要予測や価格設定などの戦略を通じて、収益を最大化するための手段を考えます。売上の推移や期間ごとの比較、そして商品や顧客、販売チャネルなどセグメントごとの分析を通じて、収益管理戦略の効果を評価し、必要に応じて調整します。


これらの要素を統合的に考慮することで、収益管理戦略が効果的に実行され、企業の収益最大化と長期的な成長が達成されます。

収益管理における課題

収益管理は効果的な戦略である一方で、いくつかの課題や難しさが存在します。以下に収益管理の主な課題を解説します。

需要の予測の難しさ

需要の予測は常に正確でないことがあります。外部の要因や予測が不可能な事象、例えば天候の変化や想定外の経済政策、市場に影響を与える感染症の発生などがあり、需要の予測の難しさが生じます。

競合環境の変化

競合他社の価格変更やプロモーションが予測と異なる方向に進むことがあります。これによって収益管理戦略の実行が困難になってしまうかもしれません。また、同業他社との競争が激化する場合、価格競争によってマージンが圧迫される可能性があります。

価格設定のバランス

高い価格設定は利益を増やす可能性がありますが、顧客の購買意欲を減少させるリスクもあります。価格と顧客の満足度のバランスを取るのは簡単ではありません。収益管理は短期的な利益と長期的な顧客関係のバランスを取らなければならない一方で、ただ利益を追求するだけでなく顧客を継続的に引き付けることも重要です。

セグメンテーションの難しさ

市場を細分化するセグメンテーションのマーケティング手法を用いることで、顧客に対して適切な価格で商品やサービスを提供することが可能です。ただし、顧客を正確にセグメント分けすることは難しく、時には適切でない価格戦略に向かってしまうことが考えられます。

情報の不足

正確なデータの収集が課題となることがあります。情報不足のままでは、収益管理の判断を鈍らせる恐れがあります。適切なデータや情報が不足している場合、正確な予測や価格設定が難しくなります。

専門知識とトレーニングの必要性

収益管理には専門知識とデータ分析のスキルが求められます。データ収集と分析を助けるのがシステムやツールですが、それらを活用するためにはやはりトレーニングが必要です。

組織の連携

社内のあらゆる部門からリアルタイムで情報を収集・共有することが求められます。収集するデータの要素や粒度が異なると、情報を分析しにくくなります。大企業だけでなく、連携体制が整えられていない中小企業でも抱える課題といえるでしょう。


これらの課題に対処するためには、正確なデータ収集、高度な分析技術、柔軟性のある戦略、継続的な改善、競争力の維持などが必要です。

収益管理を行うステップ

収益管理は、一般的には以下のステップで実行されます。

現状の収益構造の把握・共有化

まずは、現在の収益状況を把握することが求められますが、単位ごとに状況を可視化するといいでしょう。例えば、事業やプロジェクト、エリア・店舗・支店、商品やカテゴリー、顧客セグメント、などの単位です。

例えば、それぞれの単位において、売上が変わらない、もしくは向上しているにもかかわらず、利益が下がっていれば基本的に原価が高騰していると考えられます。

収益性低下の課題抽出

収益が低い場合は、売上の減少なのか、費用の高騰なのかを可視化したうえで、原因を特定し課題を抽出します。収益性低下の原因としては、価格変動、競合の影響、製品やサービスの品質、需要の変動など、さまざまな要因が考えられます。

収益性低下の課題を抽出するためには、データに基づいた客観的な分析が不可欠です。要因を特定することで効果的な解決方法の選択につながります。

長期的・かつ俯瞰的な展望による経営計画の策定

収益管理を経営計画に組み込むためには、戦略的なアプローチが必要です。収益管理は経営計画の重要な一部であり、ビジネスの成長と競争力向上に寄与します。データ駆動型のアプローチと柔軟性を持って収益管理を経営計画に組み込むことで、収益の最適化が実現されます。

定期的な収益性の評価と継続的な改善サイクルを確立することで、ビジネスの収益性を向上させることが可能です。

計画の共有

全社員が計画の内容と重要性を理解することで成功につながります。収益性の向上は組織全体の協力が必要です。関連部門とのコミュニケーションを強化し、共通の目標に向かって協力します。

効果検証・改善

実際の売上データを監視し、予測との比較を行います。戦略の効果を評価し、必要に応じて調整を行います。収益管理戦略は継続的なプロセスです。フィードバックとデータを活用して戦略を改善し、市場変化や顧客の変化に対応します。

小さな改善の積み重ねは重要ではあるものの、効果が小さいかもしれません。状況によっては、大胆な方向転換や利益率の高い商品を優先するなどの抜本的な取り組みも必要です。


これらのステップを実行し、収益管理戦略を効果的に展開することで、収益を最大化し競争力を維持することが可能です。

収益管理を行うためのツール

収益管理の実施を助けるツールとして、Excelとシステムを紹介します。

Excelで収益管理する方法

使用するPCにExcelがインストールされていることが多いため、概ね初期投資なしに始められます。また、従業員にとってなじみのあるソフトウェアであり、レクチャーが不要です。ただし、専門のツールではないので高度な分析は難しいですし、分析に関しては一定の専門知識が必要です。

システムで収益管理する方法

原価や売上管理に特化したシステムや、そのような機能を持つ総合会計システム、ERPシステムを活用します。シームレスな情報共有や高度な分析が可能となることで、収益管理の精度が高まるでしょう。ただし、使い方をレクチャーする必要があるでしょうし、導入費用がかかります。使いこなせなければ効果が得にくくなってしまうため、ベンダーの導入支援やヘルプサポートなどをよく確認したうえでシステムを選定していきます。

収益管理における成功の鍵は正確なデータ分析と柔軟な戦略

収益管理は、戦略的な価格設定と需要予測を通じて企業の収益を最大化する重要な施策です。ただし、競争激化のなかで、顧客の価値観を捉えつつ効果的な価格を設定することが求められます。必要な要素をリアルタイムで把握したうえで、正確なデータ分析と柔軟な戦略を適用しなければなりません。高度、かつ正確な分析を行うためには、部門ごとに分散しているデータを漏れなく収集・統合することも重要です。

競合環境の変化等の外部要因も考慮しなければならず、収益管理の課題は多く存在しますが、適切なツールやテクノロジー、チームの専門知識を活用し、継続的な改善を図ることで、成功へ近づくことができるでしょう。ビジネスの成長戦略において不可欠なステップであり、戦略的な視点と柔軟性を持って取り組むことで、企業の競争力を向上させる道が開かれます。