- 2023. 09. 21
- 会計   
- 電子帳簿保存法   
- 電子取引   
請求書管理はシステム導入が主流に?Excelによる管理と比較
請求書は、支払いや債権回収のもととなる重要書類です。発行時の内容の正確性はもちろんのこと、迅速な発行、確実な保存が求められます。また、法律によって一定期間の保存が義務づけられているほか、電子化した場合は電子帳簿保存法への対応が求められる点にも留意が必要です。
紙による保管やExcelによる請求書管理を行っている企業は多いかもしれません。そのような場合、業務効率や管理に課題を感じることはないでしょうか。その解決策となるのが、請求書を安全に管理できるシステムの導入です。
本記事では、従来の紙やExcelによる保管から請求書管理システムへ移行するメリットについて解説します。
- 目次
-
請求書の管理業務とは
請求書を管理する業務のうち、取引が発生してから代金を回収するまでの一連の業務が「請求管理業務」です。請求管理業務では、取引や代金の情報が記載された請求書が重要書類となるので、請求書の発行にかかわる業務が大きな比重を占めます。一方で、請求書は受領することもあり、適切な保管・管理も必要です。請求書をどのように管理すればよいのか、発行時と受領時に分けて紹介します。
請求書発行時の管理業務
請求書発行時管理業務の代表的な流れは以下のとおりです。
1.請求書の締切管理
2.請求書の発行・送付
3.入金の確認
4.入金リストの消込
5.会計処理
請求書発行時には、金額や締日、振込手数料の有無などの必要な情報を網羅しておかなければなりません。また、先方に請求書を送付する際には控えを保管することも重要な業務です。
請求書は通し番号をつけて管理すると、問い合わせに迅速に対応できるほか、会計処理や消込ミスの防止につながります。ミスが発生すると取引先からの信用を失うおそれもあるため、正確な業務が求められます。
請求書受領時の管理業務
請求書を受領したら、取引内容・金額・支払日などを確認し、期日までに支払いを行います。
受け取った請求書は社内で保管します。内容を確認したいときにすぐに取り出せるように、「取引先ごと」「月ごと」のようにまとめておきます。
請求書の管理で重要な保存期間の義務
受領した請求書に関しては、法人税法の規定では7年間の保存義務があります。また、電子帳簿保存法の改正に伴い、電子データで発行または受領した請求書については、データ保存が義務化されました。ここでいう「電子データ」には電子メールやクラウドサービス上での請求書の交付、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)によるやりとりなどが該当します。
改正電子帳簿保存法にのっとった請求書の保存方法
電子帳簿保存法の区分は、「電子帳簿保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つに大別されます。電子取引における電子データの保存は義務化されましたが、電子帳簿保存やスキャナ保存の対応は任意です。しかし、社会全体の電子化が進むなか、紙の請求書では利便性やスピード感などに課題が生じます。そのため、請求書業務も電子化することをおすすめします。
ここでは、請求書の保存・管理に関連する「スキャナ保存」「電子取引」について解説します。
スキャナ保存による管理
スキャナ保存とは、紙で発行・受領した請求書の原本をスキャンして、電子データに変換してから保存することを指します。スキャン後は、紙の原本を処分することが認められています。
電子データで管理すれば検索性が向上し、保管のためもスペースも不要となります。
ただし、解像度や階調(カラー画像)、タイムスタンプの付与など、電子帳簿保存法に定められた方法での保存・管理が求められる点に注意が必要です。
※スキャナ保存の要件について詳しくは、「電子帳簿保存法のスキャナ保存制度とは?対象書類や適用要件を解説」をご覧ください。
電子取引による管理
PDF形式などで請求書を受け取った場合は、電子データのまま保存することが義務づけられています。印刷して保存する必要がないため、効率化が図れます。
ただし、電子データでの保存時は改ざん防止のための措置をとることや、検索機能を備えたうえでの管理が必要である点に注意が必要です。
※電子取引の要件について詳しくは、「電子帳簿保存法の電子取引とは?改正による影響や取引の種類について解説!」をご覧ください。
電子取引に関しても、紙の取引関係書類をスキャナ保存する場合も、電子帳簿保存法の要件を満たさなければ、過料が科される場合があります。また、請求書の管理が不適切とみなされると、適切な国税関係書類として認められなくなる可能性もあります。
※改正電子帳簿保存法について詳しくは、「電子帳簿保存法をわかりやすく解説!基礎知識と対応のポイント」をご覧ください。
請求書管理はどのように行えばいい?
経理のプロとはいえ、請求書にかかわる業務量は発行、受領、保存、管理と膨大で、日々の業務に負担を感じることが多いのではないでしょうか。Excelとシステム利用、それぞれの請求書管理の違いを紹介します。
Excelでの請求書管理
Excelで請求書管理をする場合は、請求書の索引簿の作成、消込リストの作成などを手作業で行う必要があります。量が増えると処理に時間がかかり、社内での共有も難しいでしょう。扱う量が少なく、一定規模以下の事業所であれば管理できるかもしれませんが、取引が増え事業規模が大きくなると難しいかもしれません。
システムを利用した請求書管理
多くの請求書管理システムでは、自動で索引簿や消込リストが作成されます。自社の基幹システムや会計システムと連携させれば、自動転記、共有・分析などの作業も効率化します。請求書管理システムを利用することで、請求書の一元管理が可能です。
また、クラウド対応のシステムならば、テレワークも推進できます。自社に適した請求書システムを導入することで、経理業務の大幅な効率化が図れるでしょう。
請求書管理システムの選び方
請求書管理システムを選ぶ際に考慮すべき点は数多くあります。主な検討項目を以下に挙げます。
機能とカスタマイズ性
システムが提供する基本機能やカスタマイズ性がビジネスのニーズに合っていることを確認します。請求書の作成・編集、顧客情報管理、支払い記録などの必要な機能が含まれていることに加え、業界やビジネスモデルに合わせてカスタマイズできるかも重要です。
使いやすさ
インターフェースが直感的で使いやすいかどうかを確認します。ユーザーフレンドリーな設計のシステムを選ぶことで、従業員の研修費用や運用にかかる負担を抑えられます。
クラウドベースかオンプレミスか
クラウドベースの請求書管理システムは、導入しやすく、データへのアクセスも容易です。また、アップデートやバックアップなどの管理作業を提供ベンダーに任せられるため、運用の手間を省けます。一方、自社独自のシステムを構築したい場合は、導入時の手間が大きいですが、オンプレミスのシステムを選択することも考慮します。
セキュリティとプライバシー
顧客情報や取引データなどの重要な情報を取り扱う請求書管理システムは、十分なセキュリティ対策が求められます。データ暗号化、アクセス制御、セキュリティアップデートの提供などが重要な要素です。
拡張性と統合性
将来のビジネス成長や変化に対応できるよう、システムが拡張可能な構造を持っているかを確認します。また、既存のツールやソフトウェアとの統合がスムーズに行えるかも重要です。
コストと機能性のバランス
予算内で運用できるかどうかを検討します。ライセンス料、サブスクリプション料、カスタマイズやサポートにかかる料金などを合わせた総コストを評価します。機能を絞り込んだ安価なシステムもあれば、多機能で高価なシステムもあるため、コストと機能のバランスを見極めることが大切です。
サポートとトレーニング
システム導入後のサポートやトレーニングが提供されているかを確認します。障害発生時や運用中に質問が生じた場合に、迅速かつ適切な対応が得られるかが重要です。
評判とユーザーレビュー
同業他社やユーザーレビューサイトでの評判を調査することで、実際のユーザーの経験や意見を知ることができます。同じ業界や規模の企業がどのシステムを利用しているかを参考にすることも有益です。
改正電子帳簿保存法への対応
電子帳簿保存法のような税務関係の法律に、迅速かつ的確に対応できるソフトウェアベンダーであることは重要です。
請求書管理システムの選択は、経理業務の効率性や取引先との関係性に影響を与える重要な決定です。ビジネスのニーズや状況に合わせて慎重に選択することが大切です。
請求書の効率的な管理にシステム導入を検討しよう
改正電子帳簿保存法の施行により、電子取引のデータ保存が義務化されました。紙の取引関係書類に関しても、スキャナ保存の要件を満たすことでデータ保存に移行すれば、紙の保管コストの削減や書類紛失の防止、検索性の向上などに役立ちます。自社の基幹システムと連携させることで、経理部門での負担の大きい請求書の管理業務を改善できるのではないでしょうか。