- 2023. 07. 24
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グループ通算制度とは?経理担当者が押さえておくべき知識や注意点を解説!
従来の連結納税制度が見直され、2022年4月1日以降に開始する事業年度から、グループ通算制度に移行しました。グループ通算制度は、納税や事務手続きの負担軽減を図りつつ、連結納税と同様に節税を期待できる制度です。本記事では、概要から会計処理の留意点に至るまで、経理担当者が押さえておきたいポイントを詳しく解説します。
- 目次
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グループ通算制度について
はじめに、グループ通算制度の概要や連結納税制度との違いなどを確認しておきましょう。
グループ通算制度とは
グループ通算制度とは、企業グループ内の各法人が個別に法人税額の申告・納税ができる制度です。連結納税制度の見直しという位置づけで導入され、2022年4月1日以降に開始する事業年度から適用されています。
連結納税制度との違い
連結納税制度は、企業グループをひとつの法人とみなして納税する制度でしたが、2022年3月に廃止されました。グループ通算制度と連結納税制度は、節税効果が期待できる点は同様です。しかし、制度上、以下のような違いがあります。
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グループ通算制度 |
連結納税制度 |
納税主体 |
親法人および各子法人(個別申告方式) |
親法人(一体申告方式) |
修正時の対応先 |
修正が必要な子会社 |
親法人(グループ全体として修正) |
グループ通算制度が重視される理由
連結納税制度は、親会社が一括して法人税額を算出・申告したり、子会社で間違いがあった場合もグループ全体での修正が必要だったりと、親会社の負担が大きい制度でした。そのため、グループ全体で損益通算ができるものの、事務負担を考慮して導入しない判断を下していた企業も多かったのが実情です。
グループ内の各法人が個別に法人税額を算出・申告するグループ通算制度であれば、親企業の事務負担軽減が叶います。また、グループの組織再編を促し効率的な経営を後押しできると期待されています。
グループ通算制度の適用法人条件
グループ通算制度は、すべての法人に適用されるわけではありません。国税庁によると、「内国法人(主たる事業所が日本にある法人)およびその内国法人との間にその内国法人による完全支配関係がある他の内国法人」に適用され、さらに「そのすべてが国税庁長官の承認を受けなければならない」とされています。グループ通算制度の適用対象にまつわる条件について、国税庁の資料より紹介します。
親法人の条件
グループ通算制度において親法人となれる企業は、下記のいずれにも該当しない普通法人または協同組合などに限られます。
1.清算中の法人
2.普通法人(外国法人を除きます。)又は協同組合等との間にその普通法人又は協同組合等による完全支配関係がある法人
3.通算承認の取りやめの承認を受けた法人でその承認日の属する事業年度終了後5年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
4.青色申告の承認の取消通知を受けた法人でその通知後5年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
5.青色申告の取りやめの届出書を提出した法人でその提出後1年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
6.投資法人、特定目的会社
7.その他一定の法人(普通法人以外の法人、破産手続開始の決定を受けた法人等)
引用:グループ通算制度の概要|国税庁(PDF)
子法人の条件
グループ通算制度においては、上記の親法人除外条件の3~7までに該当する法人は子法人になれません。
中小法人の判定について
連結納税制度では、「中小法人」は親法人の資本金の額により判定され、該当すると「貸倒引当金」「軽減税率」といった特例措置が適用されていました。グループ通算制度では、企業グループ内で1社でも中小法人に該当しない場合には、通算グループ内のすべての法人が中小法人に該当しないことになっています。親法人が中小法人であっても、子法人が対象外であれば、中小企業向けの特例措置が適用されなくなるということです。
グループ通算制度がもたらす3つのメリット
グループ通算制度を利用することによって企業にもたらされるメリットは、主に以下の3つです。
1.グループ内の損益通算による節税効果
グループ通算制度では、連結納税制度同様、グループ内の赤字法人と黒字法人の所得額を損益通算できます。親法人が黒字でも、子法人が赤字であれば、納税負担額を抑えることが可能です。
2.税額控除額の限度額増加
税額控除額の限度額は、法人税額に対して一定の割合を限度として適応されます。そのため、グループ内法人が単体で申告するよりも、グループ通算制度を活用してグループ全体で申告したほうが、税額控除額を多く算出できることになるでしょう。
3.親法人の事務負担軽減
グループ通算制度では、各子法人で個別に申告処理を行う(一部の税額控除を除く)ため、親法人の事務負担は大きく軽減されることになります。税務調査後に修正・更正が発生した場合にも、原則として他のグループ内法人には影響しないことから、該当法人のみの修正対応で済みます。
グループ通算制度を利用する際の注意点
魅力的なメリットをもたらすグループ通算制度ですが、利用する際にはいくつか注意しておきたい事項もあります。しっかりと把握しておきましょう。
事前申請が必要
新たにグループ通算制度の適用を受けるには、最初の事業年度開始日の3か月前までに申請しておかなければなりません。グループ内すべての法人が適用条件に該当しているかどうかを確認した後、全法人の連名で親法人の所管の税務署へ申請し、国税庁長官より「承認」または「みなし承認」を受けます。
子法人に新たな事務負担が生じる
グループ通算制度を導入すると、子法人は、今まで対応していなかった法人税の申告・納税処理を行う必要が出てきます。場合によっては、会計システムの見直しも必要かもしれません。損益通算や欠損金の通算などはグループ全体で行わないといけないため、親法人が主体となってスケジュールや進捗を管理するようにしましょう。
グループ内の全法人が電子申告しなければならない
連結納税制度では書面申告も認められていました。しかし、グループ通算制度では、そのグループに属する全法人が電子申告しなければなりません。電子申告をせず書面申告をした場合、無申告加算税の賦課対象となるため注意が必要です。
グループ全体で連帯納付責任を負う
グループ通算制度では、グループ内で法人税が納付できない法人が発生した場合、その他の法人が代わって納付しなければなりません。滞納分の限度額は設けられていないため、全額納付となります。さらに、通算法人の管轄税務署だけでなく、滞納した法人を管轄する税務署からも処分を受けるおそれもあります。
繰越欠損金が控除できない
連結納税制度では、導入前に生じた親会社の繰越欠損金は、企業グループ内の子法人の所得から控除できていましたが、グループ通算制度への移行時にこの制度は廃止されました。子法人の所得とは相殺できなくなったことで、親法人自身の節税効果は期待しづらくなったといえるでしょう。
グループ通算制度における会計処理上の留意点
最後に、グループ通算制度を利用した際の会計上の留意点について解説します。
まず、法人税・地方法人税・通算税効果額の会計処理については、グループ通算制度では、未納税額と通算税効果額に係る債権債務を区分し、それぞれ「未払法人税等」および「未収入金」、「未払金」としなければなりません。通算税効果額は、当事業年度の所得に対する法人税および地方法人税に準ずるものとして取扱うこととされているため、「法人税、住民税および事業税」に含め、通算税効果額に係る債権債務は「未収入金」「未払金」などに含めます。
税効果会計に関する会計処理については、基本的に連結納税制度における取扱いが踏襲されているため、大きな変化はありません。具体的には、実務対応報告第42号(グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い)によって示されています。
参照:グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い 実務対応報告第42号|財務会計基準機構
グループ通算制度を正しく理解し、効率的な経営を目指そう
グループ通算制度とは、企業グループ内の各法人で法人税の申告・納付ができる制度です。親法人の事務負担が大きかったのが連結納税制度のデメリットですが、それを解消するとして期待されています。適用には条件があったり、事務処理のフローやシステムの見直しが必要になったりするケースもありますが、節税効果や業務負担軽減などのメリットも少なくありません。正しく理解し、効率的な経営に活かしていきましょう。