• 2023. 07. 04
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ERPと会計システムの違いとは?
最適なシステムを選ぶための基礎知識

ERPと会計システムの違いとは?最適なシステムを選ぶための基礎知識

年々複雑化するビジネス取引を効率的に処理するため、基幹業務を一元管理できるERPを活用する企業が増えています。このまま会計システムを利用すべきか、会計機能を含むERPを導入すべきかと悩む企業も多いでしょう。

ERPと会計システムは、異なる概念に基づいてつくられており、できることや業務範囲にも違いがあります。今回は、両者の相違点について詳しく解説しますので、比較検討の参考にしてください。

目次

ERPとは

ERPとは、「Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)」の略で、企業資源計画のことです。本来は、企業経営の基本である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一元管理し、効率的に活用しようとする考え方を指す用語です。現在は、この概念を実現するシステムやツールを意味して使われることが多くなってきています。

ERPは、1990年ごろから大手企業を中心に普及しはじめました。2000年代後半には、クラウドERPも登場しています。

ERPにはさまざまなタイプがある

ERPには、すべての業務をカバーするものから必要な機能だけを選べるものまで、さまざまなタイプが存在します。 大企業でよく利用されているのは、経営に必要なすべての業務システムをカバーする「統合型ERP」です。多機能である反面、価格が高価であったり、メリットを活かすためにはデータベースの一元管理が条件となっていたりすることから、導入・運用のハードルが高いシステムでもあります。

ほかにも、会計管理や生産管理など特定の業務だけに特化した「業務ソフト型ERP」や、必要な機能を組み合わせて構成できる「コンポーネント型ERP」、機能やアプリケーションを自由に選んでカスタマイズできる「アプリケーション型ERP」、特定の業界に特化した「業界特化型ERP」などが存在します。

ERPパッケージに含まれる主な機能

  • 財務・会計管理
  • 経費精算
  • 予算管理
  • 生産管理
  • 販売管理
  • 在庫管理
  • 購買管理
  • 債権債務管理
  • 人事・勤怠管理
  • 顧客管理
  • 営業支援管理
  • プロジェクト管理
  • BI(ビジネス・インテリジェンス)

会計システムとは

会計システムは経理業務に特化したシステムです。ERPのように会計以外の領域はカバーしていませんが、会計業務の一元化・効率化を図れます。企業の資金管理から集計、決算書作成まで行えます。パソコンの普及とともに広がり、今では多くの企業が活用しています。かつてはほとんどがオンプレミス版でしたが、ネットワーク環境が整備された近年の主流はクラウド版です。

ERPと会計システムの違い

ERPと会計システムを比較すると、その違いが理解しやすいでしょう。


  ERP 会計システム
概念・目的 経営資源を一元管理し、企業活動を最適化する 会計業務を一元管理する
できること 複数の業務をカバー
各業務の連携
会計業務の効率化
会計業務に関連する帳簿書類の作成
業務範囲 企業・組織全体 経理・会計業務に特化
メリット 複数の業務アプリケーションをひとまとめに
できる
業務ミスが低減する
経理担当者の負担が軽減される
安価で導入ハードルが低い
個別で運用できる
デメリット コストの負担が大きい
一部のシステム変更が他業務にも影響を与える可能性がある
不要な機能が付帯していることも
他部署との連携が難しい
管理会計のカバー範囲は限定的

概念や目的の違い

会計システムの目的は、会計業務の一元管理です。一方のERPは、経営資源(ヒト・モノ・カネなど)を一元管理することで、企業活動を最適化しようという考え方を実現するためのシステムです。

できることや業務範囲の違い

会計システムは、経理・会計業務に特化するものです。会計業務を自動化することで、経理領域の業務効率化を図ります。ERPは、組織全体の複数業務をカバーするものです。領域によらず、幅広い業務を効率化できます。

それぞれのメリット・デメリット

会計システムは、安価で導入ハードルが低いにもかかわらず、経理担当者の負担軽減を実現可能なシステムです。ただし、他部署との連携が取りにくく、リアルタイムに経営状況を掴むのが難しい、といったデメリットがあります。

ERPは、組織内の複数の業務アプリケーションをひとまとめにすることが可能です。重複入力をなくすことで人的ミスが低減したり、組織全体の経営状況が見える化されることによって迅速に経営判断ができたりするでしょう。

一方で、できることが広範囲に及ぶ分、コスト負担も大きくなりがちです。さらに、一部のシステム変更の影響がほかにも及ぶケースもあります。実情をいうと、全データの一元管理までできるERPは、まだそう多くは存在していません。そのため、システムの構築・運用に関しては、ハードルが高いといわざるを得ないでしょう。デメリットを超えるだけのメリットがあるかどうかは、よく検討すべきです。

ERPが向いているケースと会計システムが向いているケース

ここでは、ERPと会計システムの違いや特徴を踏まえたうえで、それぞれに向いているケースを紹介します。

ERPが向いているケース

ERPの導入は、以下のようなケースで有効です。

  • 組織内の複数業務やアプリケーションを一元化したい
  • 統一されたシステムを導入することで、組織全体の業務効率化を図り、生産性を上げたい
  • 経営状況をリアルタイムで把握し、迅速に経営判断を行いたい
  • システム導入にかかるコストが大きくても、大きな効果を得たい
  • 業務システムごとの機能要求が特に高くなく、変更頻度も少ない

会計システムが向いているケース

会計システムが向いているのは、以下のようなケースです。

  • 基本的な会計処理と報告さえできればよい
  • 企業規模が小さく、他部署との連携に不便を感じていない
  • 大きなコスト負担は避けたい
  • 他の業務システムは検討対象外

ERPパッケージと会計システムを選ぶときのポイント

最後に、ERPパッケージと会計システムのそれぞれの選び方を紹介します。

ERPパッケージを選ぶときのポイント

ERPパッケージは、企業全体で使用する点を考慮して選ぶ必要があります。全社的な使い勝手のよさを求めるなら、以下の点は押さえておきたいところです。

  • 必要な機能がすべて含まれているか
  • どの部署でも使いやすいか
  • カスタマイズ可能か
  • 内部統制は取れるか
  • グローバルに対応しているか
  • 既存システムを移行できるか

利用規模やコストを考えると、ERPは頻繁に入れ替えられるシステムではありません。そのため、導入前にはしっかりとした検討が求められます。

会計システムを選ぶときのポイント

会計システムを選ぶ際に着目したい点には、以下のようなものが挙げられます。

  • 入力・操作がしやすいか
  • 必要なレポートが作成・出力できるか
  • 利用にあたりどの程度の会計知識を要するか
  • 他システムと連携可能か
  • 他社システムからの乗り換えが容易か

会計システムについては、現時点ですでに利用しているシステムからのリプレースとなる企業も多いでしょう。リプレースの場合には、使い勝手だけでなく、既存システムからの移行も含めて検討する必要があります。

ERPと会計システムの違いを踏まえたうえで、
自社に最適なシステムを選ぼう

ERPと会計システムは、異なるコンセプトからつくられているシステムです。ERPは基幹業務を一元管理して企業活動の最適化を目指すものであるのに対し、会計ソフトは、経理業務の効率化を図ります。

会計ソフトは、安価で導入ハードルが低い点が魅力ではありますが、業務範囲は限定的です。一方のERPは、かかる費用は大きいとはいえ、組織全体の業務効率化が図れます。特に統合型ERPのメリットを活かすためには、データベースの一元管理が必須で、現実的に考えると、導入・運用が厳しい企業も少なくないのが実情です。両者の違いや特徴をしっかりと理解したうえで、自社の業務改善や生産性の向上に寄与する選択をしてください。