- 2023. 07. 04
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電子帳簿保存法の電子取引とは?改正による影響や取引の種類について解説!
2022(令和4)年1月1日施行の電子帳簿保存法の改正によって、電子取引に関して電子データの保存が義務化されました。2023年12月までの宥恕(ゆうじょ)措置があり、さらにやむを得ない理由がある場合に限り2024年以降も猶予されます。
原則としては2024年からは紙保存が禁止されるため、法人税・申告所得税に関して帳簿保存義務がある企業及び個人事業主ともに、電子取引を行っている場合は対策を講じる必要があります。
本記事では、電子取引の種類や電子帳簿保存法の改正で何が変わるかを解説していきます。
- 目次
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電子取引とは
電子帳簿保存法における電子取引とは、インターネットや専用回線を利用するEDI(Electronic Data Interchange)など、さまざまな電子的手段を用いて発生する商取引を指します。
電子帳簿保存法は、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3区分に分けられ、電子保存の要件もそれぞれに規定があります。
電子取引の対象書類としては、請求書、領収書、契約書、見積書、注文書、納品書、支払伝票などが挙げられます。例えば、電子メールの本文・添付ファイルによる請求書のやり取りによる取引などは、受け取った場合も送った場合も、原則として電子データによる保存が必要です。
ほかにも、ECサイト上で行われた備品の購入において、紙の領収書の送付がなく、サイト上でのみ領収書に相当する情報が表示される場合も電子取引に該当します。この際、PDFファイルなどのダウンロードのほか、スクリーンショット(画面コピー)による保存も認められています。
電子取引におけるデータを保存する際のフォーマットや保存期間、検索要件などは、以下のように法律で要件が定められています。
電子取引の内容判別できること
大前提として、保存する電子取引データは、取引の内容が分かるものでなくてはなりません。取引年月日、取引金額、取引先等が明確でない場合は、データとして不十分です。情報に不備がないか、作成・受領の段階で確実にチェックしなければなりません。
真実性が確保されていること
保存するデータは、不正に改ざんされていないことが証明できるようにする必要があります。具体的には、訂正または削除を行った場合にはこれらの事実および内容を確認することができるシステムを利用することや、タイムスタンプの付与などによってデータの真実性を確保できます。
なお、システムを使用する場合はシステム概要書やシステム仕様書などの関係書類を備え付けておくことも求められます。
可視性が確保されていること
保存するデータについては、いつでも見られる状態にしておく必要があります。ディスプレイやプリンター等を備え付けておくことが該当します。ディスプレイで見られる状態にしておくだけでなく、必要に応じて紙に出力できるようにしておかなければならない点に注意します。
さらに可視性には、取引年月日、取引金額、取引先の条件によって電子取引データが検索できることも含まれます。ただし、売上高が一定額以下の企業・個人事業主であれば、税務調査等の際に担当者による「ダウンロードの求め」に応じられるようにすることで、検索機能のすべてを不要とする措置がとられています。
上記の要件を満たすために、保存場所やファイル名を明確にすることが重要です。必要なデータが見つからない、といったことにならないよう、社内で運用ルールを定めましょう。加えて、定期的なバックアップをとり、データの消失や破損に備えることも大切です。
電子帳簿保存法の改正による電子取引への影響
電子取引データ保存について、影響が大きかった2022年1月の改正内容と、2024年1月からの猶予措置について紹介します。
2022年1月改正の内容
2022年1月の改正電子帳簿保存法において、電子取引データの保存方法が改定されました。従来は電子取引のデータを印刷する紙保存が認められていましたが、該当措置が廃止され、電子データによる保存が義務化されました。
紙での取引のみを行っている企業・個人事業主には影響しませんが、電子取引を行っている場合には影響が生じます。宥恕措置により、2023年12月31日までは従来どおりに電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できれば差し支えありません。
しかし、2024年1月からは原則として保存要件に従った電子データの保存が必要です。電子帳簿保存法の第7条「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」には、下記のように電子保存に関することが明記されていますので、紹介します。
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
「第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。」
引用:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 | e-Gov法令検索
また、国税庁が公開しているPDFファイルには、下記のように電子データの保存に代えて紙保存できる措置が廃止されたことが記されています。
「申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。」
引用:電子帳簿保存法が改正されました | 国税庁(PDF)
電子帳簿保存法や2022年1月1日施行の改正の全体像については、
「電子帳簿保存法をわかりやすく解説!基礎知識と対応のポイント」をご覧ください。
2024年1月からの猶予措置とは
本来であれば上述のように、電子取引データの保存については改ざん防⽌や検索機能など所定の要件が必要です。しかし、次の2つの要件をいずれも満たしている場合には、電子取引データを単に電子保存しておくことが可能です。
- 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合
- 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」およびその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合
「相当の理由」の詳細は明らかになっていません。また、あくまで猶予措置は例外的な措置です。そのため企業や個人事業主は猶予措置を前提にするのではなく、電子取引のデータ保存要件を満たすよう準備していくことが望ましいでしょう。
電子取引の具体的な種類
請求書や領収書などのやり取りにおいて、電子取引に該当する種類について説明します。電子帳簿保存法における電子取引の種類は以下のとおりです。
1.電子メールによる取引(PDFファイル等)
2.ECサイト等のインターネットサイトを介した取引
3.電子データ交換(EDI)による取引
4.クレジットの利用明細データやI Cカードを利用した取引
5.クラウドサービスを利用した取引(電子請求書・電子領収書等)
6.ペーパーレス機能をもつFAXを利用した取引
7.DVD等の記録媒体を介した、電磁的方法による取引
上記のように、さまざまな種類の電子取引が電子帳簿保存法における対象です。企業や個人事業主は、自らの取引形態や業務に応じて適切な方法で電子帳簿保存法に対応する必要があります。
電子取引データの保存への対策方法
電子取引データの保存への対策としては、市販のシステムやクラウドサービスを利用するのが一般的です。ここでは、利用しない場合と利用する場合について考えてみましょう。
市販のシステムを利用しない方法
電子取引データの保存において、市販のシステムを利用しない場合は、以下のような対応が必要です。
1. 改ざん防止のための事務処理規定を定めて守る
2. Excel等を使用して索引簿を作成したり規則的なファイル名を設定したりすることで検索要件を満たす
上記の2つの方法によって、データの保存や保管に関する法令の要件を満たすことは可能です。しかし、規定を新たに作り、それに沿った業務フローを構築しなければならないため、簡単ではないかもしれません。
ただし「可視性」の箇所で述べたとおり、売上高が一定額以下で、かつ税務調査の際にデータのダウンロードに対応できる場合はそもそも検索機能の確保は不要です。
市販のシステムを利用する方法
法令に準拠した安全なデータ保存を行うためには、電子帳簿保存法に対応した市販のシステムやクラウドサービスを利用することをおすすめします。市販の会計ソフトや電子帳簿システムを利用すれば、電子帳簿保存法における電子取引にスムーズに対応しやすいからです。
ただし、システムを導入するためには、選定時に要件整理を行い、導入作業においては、設定・運用方法の学習が必要です。データ管理も含めて適切に利用するには、専門家に相談する事が有効です。
法令に沿った準備が必要となるので早めの対応を
2022年1月1日施行の改正電子帳簿保存法により、電子取引が発生する企業と個人事業主には、規定に基づいた保存が義務付けられました。2023年12月31日までの宥恕措置があるとはいえ、宥恕期間の残りはあとわずかです。適切な知識と一定の準備期間が必要となるので、早めのシステム導入をおすすめします。
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