新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、一気に広がったテレワーク。しかし、一度はテレワークを導入したものの、一時的な“その場しのぎ”になってしまった企業も多かったようだ。
その理由の一つには、出社せざるを得ない業務があり、長期間テレワークに対応できる体制を構築できていないことがある。
特に経理部門では、膨大な量の紙の書類を取り扱うことに加えて、そういった書類を扱う業務が属人的になりがちなことなどがテレワークの本格導入を妨げている。
しかし、経理部門のテレワーク運用を諦めてしまうのはもったいない。テレワーク導入の検討をきっかけに、ペーパーレス化や業務の自動化などのデジタル化に取り組むことは、生産性向上や人材の有効活用につながる。
そんな経理部門の取り組みを後押しする機能を備えているのが、ICSパートナーズが提供する戦略情報会計システム「OPEN21 SIAS」だ。同社は「経理の仕事に役立つシステム」を提供することを貫き、RPA(Robotic Process Automation)などの技術を活用した機能の開発も進めている。同社の峯瀧健司社長に、経理部門のテレワーク推進や業務効率化に役立つシステムへの思いを聞いた。
テレワークは「必要」だが“紙”がハードルに
―― 新型コロナ感染拡大以降、顧客企業のテレワークを巡る状況をどう見ていますか。
テレワークに対する意識は確実に高まっています。日本CFO協会が経理・財務部門を対象に実施したアンケート調査によると、災害などの緊急時にテレワークができる体制が必要だという回答は95%以上。また、平常時でも導入すべきだとする回答は75%を占めています。
一方、実際にテレワークを実施できているのかというと、業務のデジタル化が比較的進んでいると考えられる弊社のユーザー企業に絞っても、実施できたのはわずか27%。4分の1程度にすぎないのが現状です。
―― 経理部門でなかなかテレワークを実施できていないのはなぜでしょうか。
テレワークを阻害する要因のほとんどが、はんこと紙の問題です。経理部門の業務は経営戦略や税金などの重要事項に関わるため、膨大な書類を保存し、すぐに閲覧できることが必要になります。領収書や請求書などは原則7年間の保存義務があり、監査や外部調査にも対応する必要があります。そんな膨大な量の重要な書類を持ち帰ることはできないし、やりたくない。
書類を電子化して社外で確認できるようになれば自宅でも業務ができますが、日本の企業ではマネジメントする立場の人が紙の書類に慣れていることが多く、なかなか理解が進みません。膨大な書類を扱う業務の性質上、紙をなくすハードルも高く、テレワーク導入が進まない一因になっています。
- 経理部門のテレワークの現状について語る、ICSパートナーズの峯瀧健司社長
「あの書類を見たい」に即座に対応
―― 「OPEN21 SIAS」では、そういった課題を解決できるのですか。
弊社は、コロナ禍の前からペーパーレス化を推進し、書類を電子データにしてシステムに添付できる機能を実装してきました。
このシステムでは、書類の管理方法を紙から電子データに変更できるだけでなく、「AI OCR」による自社開発の書類読解機能や電子請求書サービスとのAPI連携によって、会計伝票の入力も自動化・効率化できます。
その結果、仕訳情報と一緒に領収書、請求書、稟議書などの書類をシステム上で確認できるようになるため、書類確認のための出社は必要なくなります。
また、紙の他にはんこの問題もあります。その中でも多いのが、経費精算の承認。申請書や領収書などを確認したことを示すために捺印をしている企業はまだ多いでしょう。
これも、まず領収書などを電子化して添付するワークフローに変えれば、証憑原本と申請書や精算書を照合する作業が自宅でもできるようになりますし、はんこを押さなくても承認したことを示せます。
システム内に経費精算のワークフローシステムを用意していますので、仕訳作成や書類添付、会計システムへの連携までスムーズにできます。
―― 書類を電子化するだけで、かなり広い範囲の業務負荷が軽減されるのですね。
こういった機能は、社内外からの問い合わせや監査に対応する際にも役立ちます。
会計システムの仕訳情報に関連書類をリンクさせているので、請求書などのほか、経営判断のもとになった書類や取引先情報、承認ルートなどをすぐに閲覧できます。
PDFやExcel、Wordなど、さまざまな形式のファイルがリンク可能です。例えば、物件を借りて出店をした際の会計情報には、請求書、店舗の物件情報、店舗の写真などをリンクさせることができます。
- 会計情報にさまざまな形式の書類を添付できる
こういった書類を紙で保管していると、いざというときに探す手間がかかります。何年も前の書類だからといって外部倉庫などに保管していた場合は、さらに時間がかかる。画面上の帳面から関連書類へとスムーズに移行できれば、負荷が軽減します。
当初はお客さまから「スキャンして添付するのが面倒」という声もありました。しかし、今回テレワークの必要に迫られたことで、便利さを実感していただけた企業が多いようです。
一見、書類添付の仕事が増えたように見えますが、添付の作業は自分の好きなタイミングでできます。一方、「あの書類を見せて」と言われたときは相手の都合に合わせないといけません。
皆さんよく思われることですが、忙しい時に限ってそういった指示をされるんですよね。システムに書類を登録しておけばすぐに出せますし、社内の役員などであれば、自分でアクセスして閲覧してもらうことも可能です。
ペーパーレス化は経理部門から
―― とはいえ、メリットがあるのは分かっているけど、なかなかペーパーレス化を進められない、という企業も多そうです。
私たちは「まずは経理部門からペーパーレス化しましょう」ということを提唱しています。
全社で一気に取り組むのは理想的ではありますが、会社にはさまざまな部署があり、書類の重要度も量もバラバラ。まずは全社横断のプロジェクトチームを作って調整することが必要になります。
この取り組みは各部門の業務の全体像が分かっている人しかできないため、忙しい管理職などが担当せざるを得ず、なかなかプロジェクトは進みません。
ですから、ほとんどの企業でペーパーレス化は「重要だけど後回し」になってしまう。日々の業務に直接影響しないからです。運用ルールをしっかり決めないといけない上に、組織の変化に合わせて随時、変えていく必要もあります。また、全社で取り組むのであれば、投資額も高額になります。
一方、経理部門だけであれば、取り組むメンバーは所属部員だけなので、運用しながらやり方を変えていくこともできます。
その上、経理部門は社内の重要書類に関する問い合わせや情報の量が多く、経理部門だけで取り組んでも多くの書類に対応できることになります。関与する情報量は全社の30~50%程度になるのでは。そして、一つの部署だけがシステム化の対象なので、投資額も少額になります。
つまり、ペーパーレス化のコストを抑えた上で、全社で取り組むときの半分程度は効果を挙げられることになります。また、実現性もかなり高くなるのです。
- ペーパーレス化は、全社で取り組むのがベストだが、経理部門だけでも効果は高く、実現性も高い
自社開発の技術で柔軟な働き方をサポート
―― 新しい技術を活用した機能も自社で開発し、書類をAIで読解したり、RPAで業務を自動化したりする機能もオプションで提供されています。こういった機能も経理の業務に役立つのでしょうか。
労働力人口は減少しており、経理部門についても人手不足が深刻になっていくと思います。経理部門には月次や週次で必ずやらなければならない業務があり、それは一見単調な作業ですが、抜けてしまうと大変困る重要な仕事です。
そういった定型業務をRPAで自動化すれば、間違えたり忘れたりすることを防げる上に、業務を効率化し、人材を判断や意思決定の業務に集中させることができます。
労働力を確保するためには、遠隔地にいる人や家庭の事情がある人なども働ける柔軟な仕組みが必要です。
書類の電子化によって出社せずに対応できたり、自動化によって業務を効率的に進めたりできれば、経理のノウハウがある元社員なども戦力になります。「遠隔地でも仕事ができる」という仕組みを提供して、働き方の多様化につなげてもらえればと思います。
10月1日には、山口市と大阪市にシステム開発の子会社を設立しました。今後も先端技術を活用し、経理部門の仕事に役立つ機能を開発していきます。
―― テレワークの導入を検討することは、日々の業務をあらためて見直すことにつながるのですね
テレワークが「ベスト」と考えているわけでもありません。オフィスで働くメリットもあります。これからは、両方を組み合わせたハイブリッドが増えていくのでは。
しかし、いざというときにテレワークできない状況に陥ってしまうのは、リスクヘッジの面で問題だと思います。大きな台風が来るのが分かっていて、鉄道会社も計画運休を実施するのであれば、出社しなくても仕事ができるようにしておかなければなりません。
普段はテレワークはしない、という方針でも問題ないと思いますが、万が一のことがあったときの手段は講じておく必要があります。「必要に迫られていないからそのうち対応する」というのはもう通用しません。新型コロナに限らず、業務上のリスクはたくさんあるのですから。
ビジネス環境が大きく変わっても、会計業務の目的が変わることはありません。どんな環境でも止めることができない仕事だからこそ、環境に応じて合理的に対応するためのお手伝いをしていきたいと考えています。
経理部門のテレワーク導入は、コロナ対応を超えて、気になりながらも着手できなかった“困りごと”を解決し、生産性向上や人材の有効活用を推し進める効果が期待できる。
それを強力にサポートするのが、経理・会計業務に特化した機能を持つ「OPEN21 SIAS」だ。まずは経理部門から、オフィス業務の改革を始めてみては。
この記事は、アイティメディア株式会社の提供により、ITmediaにて取材・掲載された記事を一部内容を変えて掲載しています。